映画評『ウインド・リバー』テイラー・シェリダン初監督の圧倒的な緊迫感と衝撃がみなぎるクライム・サスペンス

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『ウインド・リバー』
2017年アメリカ
原題:Wind River
監督:テイラー・シェリダン
脚本:テイラー・シェリダン
音楽:ニック・ケイヴ
   ウォーレン・エリス
出演:ジェレミー・レナ―
   エリザベス・オルセン
   グラハム・グリーン
   ケルシー・アスビル
   ギル・バーミンガム

『ウインド・リバー』イントロダクション

月夜の下、雪の荒野を走るものがあった。

傷を負い、はだしの少女だった。

何度倒れても立ち上がり、少女は走った。

FWS(合衆国魚類野生生物局)のベテラン・ハンターコリー・ランバート(ジェレミー・レナ―)は、息子のケイシー(テオ・ブリオネス)を同伴してワイオミング州ウインド・リバー・先住民居留地を訪れた。

現地で放牧している牛がピューマに襲われているので、その管理のためだった。

ひとり、スノーモービルで雪の原野を調査に出たコリーだったが、ウインド・リバー保留地、ボルダ―・フラッツの東で、不自然な足跡を発見、たどっていくと、果たしてそこにはネイティブ・アメリカンの少女ナタリー(ケルシー・アスビル)の死体が横たわっていた。

コリーは無線で応援を要求する。

保留地のBIA(インディアン部族警察)の署長ベン(グラハム・グリーン)はFBIに応援を要請するが、雪あらしが吹きすさぶようになってもまだ誰も現れなかった。

コリーは遺体をFBIに確認してもらいたかったため、現場にそのままにしてきたが、この吹雪で足跡が消えることも警戒していた。

今のうちに足跡をたどりたかったコリーだが、ベンはFBIを通さないとそれは許可できないという。

そこに、雪まみれになった乗用車が現れた。

ようやく到着したFBIは、新人捜査官のジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)ひとりきりだった。

裁判所からその足で派遣されたというジェーンの服装は吹雪のウインド・リバーには軽装過ぎ、コリーの義母から防寒着を借りるはめになる。

ようやくナタリーの遺体にたどり着いたジェーンは、検分を始める。

その様子から、ナタリーはレイプされたうえ暴行を受けた“殺人”とジェーンは判断する。

コリーの見立てでは、マイナス30度にもなる冷気を吸った肺の出血、それに伴う窒息が死因だった。

ここから一番近い民家でも5.5キロ、8キロ先には掘削所の作業員の寮があった。

ナタリーはどこからやってきたのか、それも裸足で・・・。

テイラー・シェリダン初監督の圧倒的な緊迫感と衝撃がみなぎるクライム・サスペンス『ウインド・リバー』

冒頭、「事実に基づく」とテロップが入る。

『ボーダーライン』(2015年)、『最後の追跡』(2016年)の脚本家テイラー・シェリダンが初監督をつとめ、全編を圧倒的な緊迫感と衝撃がみなぎるクライム・サスペンスが出来上がった。

雪原で発見されたひとりの少女の遺体から、次々と浮かび上がる手がかりと、そしてネイティブ・アメリカン保留地の背筋が寒くなる現実が描かれる。

舞台となった雪山のごとく、静かに、厳しく覆い隠されたアメリカ現代社会の暗部を浮かび上がらせる。

派手なアクションこそ少ないものの、静かに苦々しく迫る感情を味わうことになる。

それは極限の環境下におかれた人間がみせる本能でもある。

視聴後、いやが上でもその余韻に浸らざるを得ない、メッセージ性の強い作品だ。

2017年第21回ハリウッド映画賞・ブレイクスルー監督賞、同年第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞している。

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