映画評『許されざる者』クリント・イーストウッドが映画作家としての世界的な評価を決定づけた、映画史上に燦然と輝く傑作ウエスタン!

夕焼けとカウボーイ 映画評
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『許されざる者』
1992年アメリカ
原題:Unforgiven
監督:クリント・イーストウッド
脚本:デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
音楽:レニー・ニーハウス
出演:クリント・イーストウッド
   ジーン・ハックマン
   モーガン・フリーマン
   リチャード・ハリス
   ジェームズ・ウールヴェット
   ソウル・ルビネック
   フランシス・フィッシャー
   アンナ・トムソン
   アンソニー・ジェームズ

『許されざる者』イントロダクション

1881年、ワイオミング準州、とある宿場町にあるビッグ・ウイスキーという酒場兼売春宿で事件が起こる。

客として訪れていたカウボーイのクイック・マイク(デヴィッド・マッチ)が、娼婦のデライラ(アンナ・トムソン)に「アレが小さい」と笑われたと激怒し、デライラの顔をナイフで激しく傷つけたのだ。

クイック・マイクと、同じく娼館で楽しんでいたもう一人のカウボーイ、デービー・ボーイ(ロブ・キャンベル)の二人はこの酒場兼娼館の主人スキニー(アンソニー・ジェームズ)に取り押さえられる。

スキニーがこのカウボーイ二人を殺すというので、真夜中だというのに保安官のリトル・ビル・ダゲット(ジーン・ハックマン)が呼び出される。

裁きはリトル・ビルにゆだねられたが、カウボーイ二人が馬七頭をスキニーに引き渡すということでこの件を落着させる。

スキニーはおおむねこの裁定に満足したが、娼婦たちは納得できなかった。

娼婦たちのなかでも年長のストロベリー・アリス(フランシス・フィッシャー)は、娼婦たちから今持っている金をまとめ、賞金として二人のカウボーイの首に賞金を懸けることにした。

そしてこのことを町に立ち寄る客たちに触れ回った。

この話は、尾ひれをつけながらあっという間に口伝えで広まっていった。

一方、カンザスではウィリアム・マニー(クリント・イーストウッド)が豚を飼いながら子供二人と貧しい生活を営んでいた。

そこにスコフィールド・キッド(ジェームズ・ウールヴェット)と名乗る若いガンマンがウィルを訪ねてくる。

キッドは過去、ウィルが悪逆非道を行っていたころの仲間の甥だった。

キッドは、賞金を目当てにワイオミングのカウボーイ二人を殺しに行こうと持ち掛ける。

自分は堅気になったのだから、と一度は話を断るウィルだったが、子供たちとの生活をよくするためにも金が要る。

ウィルはキッドの話しに乗ることにした。

ウィルは近所に住むかつての悪党仲間で、やはり足を洗って農夫をしていたネッド(モーガン・フリーマン)に留守中の子供たちの世話を頼もうとするが、賞金を山分けするという条件でネッドもこの話に乗り、三人は合流する。

ビッグ・ウイスキーの町に三人がつくころ、激しい雨が降りしきり、老人二人と若造は凍えながら酒場に入るのだった・・・・

クリント・イーストウッドが映画作家としての世界的な評価を決定づけた、映画史上に燦然と輝く傑作ウエスタン!『許されざる者』

監督と主演を兼任し、いまでこそその作家性を認められ巨匠の仲間入りしているクリント・イーストウッドだが、その世界的な評価を決定づけたのがこの『許されざる者』という傑作ウエスタン映画だ。

『荒野の用心棒』などでマカロニ・ウエスタンのヒーローだった若き日のイーストウッドは、ハリウッドに戻ってからもと折々で西部劇の主演を務め、時には自分でメガホンを取り、そのキャリアを重ねてきた。

そのイーストウッドが、異色ともいえる筋立ての西部劇で、映画作りの恩師であるセルジオ・レオーネとドン・シーゲルに恩返しをする(『許されざる者』は二人にささげられている)。

颯爽としたカウボーイの活躍や、爽快な早撃ち合戦はここでは見られない。

さまざま西部の英雄譚の裏話、実はさえない、人間らしい弱さや汚さを前面に出した、変化球の西部劇なのだ。

広い青空にバッファローが群れなす荒野も出てこない。

やたら雨のシーンが多く、画面の作りは重苦しい。

ウエスタンとしてのお約束の上に、それを裏切り続ける演出と物語に説得力があるのは、長年自身がウエスタンのヒーローとして活躍してきたイーストウッドの頭脳の明晰さとともに、前述のとおり二人の先輩監督から教わった映画作りのスキルが反映されていると言ってよいだろう。

かつて名をはせた悪党だったが今は老いぼれてしまった男のラスト・スタンディング。

そこに西部の男たち女たちの泥臭い人間模様を描いたところに、異色ながら西部劇として認められ、アカデミー賞作品賞まで受賞する本作。

イーストウッド映画の節目である。

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