『真昼の死闘』(原題:Two Mules for Sister Sara)
1970年アメリカ
監督:ドン・シーゲル
主演:クリント・イーストウッド
シャーリー・マクレーン
音楽:エンニオ・モリコーネ
タイトルにひとひねりあります
原題(“Two Mules for Sister Sara”シスターサラの二頭のラバ)を見てもらえばわかる通り、主人公はイーストウッド演じるホーガンというよりは、シャーリー・マクレーン演じるシスターのサラ。
といってシスター・サラとホーガンは相棒を組む形で物語は進むので、イーストウッドの出番もしっかりたっぷり。
西部劇なんだけど、ちょっとひねってあって舞台はフランス占領下のメキシコ。
というわけで、マカロニ・ウエスタン「風」西部劇になっている。
(「マカロニ・ウエスタン」という言葉がそもそも、イタリアで制作された西部劇のこと。ひいてはアメリカ以外の国で作られた西部劇を総じて「マカロニ・ウエスタン」と呼ぶようになった。なのでマカロニ・ウエスタンの舞台はいつもアメリカの西部っぽい何処か、という、ちょっと独特の雰囲気をかもし出している。)
そこに現れる不愛想な流れ者の凄腕ガンマンがクリント・イーストウッド。
これは『荒野の用心棒』『夕日のガンマン』『続・夕日のガンマン』でマカロニ・ウエスタンのヒーローとなったイーストウッドにとっては十八番の役どころだ。
邦題は『真昼の死闘』となっているけど、クライマックスの戦闘は真夜中。
これは邦題タイトルが、傑作西部劇『真昼の決闘』(1952年、ゲイリー・クーパー主演)の二番煎じだから。
誰が邦画タイトルを担当したのかわからないけど、とにかく内容よりお客さんを釣れるタイトルを、と考えたのだろう。
確かに原題直訳の「シスターサラの2頭のラバ」だと何の映画かわからないし、魅力には欠ける。
ここはひとひねりするところだったんだろう。
しかしWikipediaの情報をよく見てみると、1976年にテレビ地上波で初放送されたNETテレビ『土曜映画劇場』では、『イーストウッドの狼たちの荒野』というタイトルで放送されたとのこと。
その年代あたりまではまだ適当だったんだなあ!
ストーリーと作風
流れ者のホーガンは、3人の荒くれ者に襲われるシスター・サラを成り行きで助けることになる。
シスター・サラはフランス軍に追われており、ホーガンもなし崩し的にフランス軍に追われることに。
とは言いつつ、ホーガンもゲリラと手を組み、フランス軍の駐屯地から金品を奪う計画を立てていた。
駐屯地に潜入したサラから、資材を運ぶフランス軍の貨物車が来ることを知ったホーガンは、この爆破をもくろむ。
だが移動中、インディアンに襲われ、ホーガンは肩にけがを負ってしまう。
ホーガンの代わりに貨物車が通る陸橋にダイナマイトを仕掛けることになるシスター・サラ。
二人は協力して貨物車爆破に成功する。
そして二人はゲリラが潜む岩山にむかい、ゲリラを率いるベルトラン大佐(マノロ・ファブレガス)と会う。
今度はフランス軍駐屯地を襲撃する計画が持ち上がり、一儲けしようとホーガンはたくらみ、ゲリラに協力的なシスター・サラはダイナマイトを購入するための金策に走る。
作戦決行前、シスター・サラは何かをホーガンに伝えようとするが・・・
メキシコが舞台で、主人公のガンマンはクリント・イーストウッド、そこに音楽がエンニオ・モリコーネとくれば、マカロニ・ウエスタンが完全に作り手の念頭にあったのは間違いない。
イーストウッドとシャーリー・マクレーンのコンビによる道中というのも面白い。
この時代のドラマなら、シスターを守ってガンマンが悪と戦う、という構図が王道だろうが、この映画ではそれを踏まない。
無頼漢のはずのホーガンが、ついついシスターのペースに乗せられて思わぬ方向に向かってしまう。
シスターも清廉潔白ではなく、ゲリラに肩入れしていたりする。
彼女にはまだ秘密があるのだが、それは見てのお楽しみ。
イーストウッドにとってはこの作品は『マンハッタン無宿』に続き、ドン・シーゲル監督とのコンビ2作目。
前述の取り、マカロニ・ウエスタン出身のイーストウッド、当時すでに一流女優だったシャーリー・マクレーンの二人を主人公に迎え、ドン・シーゲルは直球の西部劇は作らなかった。
どこかコミカルなイーストウッドとマクレーンのやり取りや、西部劇なのに銃よりもダイナマイトで派手にケリをつける作劇など、異色でシニカルな西部劇となっている。
70年代はの西部劇はすでに斜陽の時代で、この後のイーストウッドも『荒野のストレンジャー』や『ペイルライダー』など西部劇の制作は数が減り、現代ものが増えていく。
そのイーストウッドが「最後の西部劇」と呼ばれる傑作『許されざる者』を撮影するのは1992年だ。
『真昼の死闘』は終わりを迎えようとする西部劇の残り香のように思える。
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