映画評『間違えられた男』強盗犯に間違われ、逮捕された男が体験する恐怖を、巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督が描く異色のサスペンス!名優ヘンリー・フォンダ主演

映画 映画評
スポンサードリンク

『間違えられた男』
1956年アメリカ
原題:The Wrong Man
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:マクスウェル・アンダーソン
   アンガス・マクファイル
原作:マクスウェル・アンダーソン
   ハーバート・ブリーン
   『A Case of Identity』
音楽:バーナード・ハーマン
出演:ヘンリー・フォンダ
   ヴェラ・マイルズ
   アンソニー・クエイル
   ハロルド・J・ストーン
   ネヘマイア・パーソフ

『間違えられた男』イントロダクション

マニー(ヘンリー・フォンダ)は高級ナイトクラブの楽団でベースを弾いて生計を立てている。

一見華やかそうな仕事に反して実入りは決して多くなく、マニーは妻のローズ(ヴェラ・マイルズ)、二人の息子と、いくばくかの借金を抱えながらつましく生活していた。

あるとき妻のローズが歯医者で親知らずを抜くことになり、300ドルのお金が必要になった。

そんな大金はマニーの給料からすぐに払えるものではなく、夫婦はあらたに借金することに決める。

ローズの保険証書を担保に保険会社にお金を借りに行ったマニーだったが、オフィスでマニーを見た事務員の女性が、以前事務所に現れた強盗犯とマニーを間違えてしまう。

事務員の女性はすぐに上司に訴え、警察の出番となった。

夜になり帰宅し、いつもどおり家のドアを開けようとしたマニーを、警官たちが連行する。

マニーには妻に一言告げる時間すら与えられなかった。

いちど警察の分署に連行されたのち、マニーはあちこちの酒屋や雑貨屋に顔見せをさせられる。

そこはかつて強盗犯に襲われた店だった。

取調室でマニーは、刑事にメモを書かされる。

刑事は強盗犯が残したメモと同じ文章をマニーに書かせたのだ。

筆跡は必ずしも一致してはいなかったが、同じ綴りミスをしていることから、逮捕の運びとなってしまう。

自分の無実を訴えるも全く聞いてもらえないマニーは、ついにそのまま一晩拘留される。

あの保険会社のオフィスの女性も警察署に呼ばれ、マニーの人相を確認するが、やはり強盗犯と間違われたままだった。

目撃者たちは一様にしてマニーを強盗犯と断定するのだった。

翌朝、あれよあれよという間に裁判所の冒頭手続きを受けさせられ、一言も発することができないままマニーは刑務所に収監される。

絶望的だったマニー。

しかしマニーの姉夫婦が保釈金7千5百ドルを肩代わりしてくれたおかげで、とりあえずマニーは家に帰ることができた。

とはいえ、無実を証明するためにマニーとローズの夫婦は、これから弁護士フランク・オコナー(アンソニー・クエイル)に相談を持ち掛け、強盗事件が起きた日のアリバイを証明するために奔走することになる。

それはローズにとっては精神に多大な負担をかけることになるのだった・・・。


強盗犯に間違われ、逮捕された男が体験する恐怖を、巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督が描く異色のサスペンス!名優ヘンリー・フォンダ主演『間違えられた男』

冒頭からヒッチコック監督本人が登場する。

がらんどうの撮影スタジオでライトを背負い影を長く伸ばすヒッチコックが、この作品が今まで自分が撮影してきたサスペンスとは一味違うものであることを説明する。

なるほどこの『間違えられた男』は、ヒッチコックの数あるサスペンス作品のなかでも異色だ。

強盗犯人に間違えられた男が、有無を言わせぬまま犯人に仕立て上げられてしまう。

犯人は主人公によく似た男なので、目撃者はすべて主人公を犯人扱いする。

警察も目撃証言重視で動き、取り調べも現在の目から見ればザルも同然。

主人公は自分の無実を自分で証明しなければならない、けっこうな無理ゲー状態なのである。

この作品が発表された当時は、警察の捜査も理念も、現在とは相当に異なる。

筆跡鑑定もなかったし、指紋も鑑定の技術はまだまだだ。

アリバイ調査も警察が行わない。

そういう時代の作品であるので、主人公を襲う理不尽さが余計に怖い。

ヒッチコックのサスペンス作品のなかでは珍しく、アクションシーンもないが、主人公を襲う悪夢の連続の描写で引き込まれ最後まで視聴してしまう。


こちらの作品もどうぞ!
≫映画評『断崖』巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督、夫に殺されるのではないかと疑う妻の恐怖を描くロマンティック・サスペンス・スリラーの傑作。

コメント

タイトルとURLをコピーしました