映画評『オデッサ・ファイル』元ナチス親衛隊たちが結成した秘密組織に迫るフリー・ジャーナリストを描く傑作サスペンス

カチンコ 映画評
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『オデッサ・ファイル』
1974年イギリス・西ドイツ
監督:ロナルド・ニーム
脚本:ケネス・ロス
   ジョージ・マークスタイン
原作:フレデリック・フォーサイス
音楽:アンドルー・ロイド・ウェーバー
出演:ジョン・ヴォイト
   マクシミリアン・シェル
   メアリー・タム
   マリア・シェル
   デレク・ジャコビ
   ハンネス・メッセマー
   シュミュエル・ロデンスキー

『オデッサ・ファイル』イントロダクション

1963年11月22日金曜日の夜。

フリージャーナリストのペーター・ミラー(ジョン・ヴォイト)は、アメリカのケネディ大統領が暗殺されたニュースを移動中の車のラジオで聞いた。

おりしも同日、一人の老ユダヤ人がガス自殺、その部屋から発見された日記をペーターは入手する。

日記は老ユダヤ人の戦中を記録したもので、特に老人が収容されていたリガの強制収容所の惨劇についてだった。

ユダヤ人を次々と殺戮するのは署長のエドゥアルド・ロシュマン(マクシミリアン・シェル)で、終戦が近づくとロシュマンは逃亡。

さらに逃亡の際、けが人を輸送しようとしていたドイツ国防軍の病院船を徴収しようとし、反対した船長を射殺していた。

ペーターは、そのロシュマンが司法の追及を逃れて現在も国内で堂々と生活している事実を知り、義憤に駆られる。

出版社からのスポンサーを受けられなかったペーターは、独力で取材調査に乗り出す。

ナチス政権下でユダヤ人絶滅政策を遂行していたSSの幹部たちは、降伏直前、連合軍の追及を逃れ、新しく生まれ変わった戦後ドイツへの浸透を図っており、名誉回復のプロパガンダや旧軍人たちの集会をするなど、社会的に根深い活動を行っていた。

そのなかでも秘密組織「オデッサ」は、現在紛争中のエジプト、イスラエルの争いにまぎれてイスラエルに細菌爆弾や放射性物質を大量のロケット弾を撃ちこみ、イスラエルを壊滅させる作戦を実施しようとしていた。

ペーターは「オデッサ」に復讐を試みるユダヤ人過激派組織の力を借り、ロシュマンの行方を突き止めたらイスラエル諜報特務庁(モサド)と情報を卿数することを条件に、特殊訓練を受け、元SSの曹長ロルフ・コルプに成りすまし、組織に潜り込むことを画策する・・・。

元ナチス親衛隊たちが結成した秘密組織に迫るフリー・ジャーナリストを描く傑作サスペンス『オデッサ・ファイル』

原作は『ジャッカルの日』のフレデリック・フォーサイスのサスペンス小説。

フォーサイスはロシュマンをはじめ、実在のナチス関係者や組織についてかなり詳細な情報を入手してこの『オデッサ・ファイル』を執筆したとされる。

タイトルの『オデッサ・ファイル』も、西ドイツ司法省あてに1964年2月、匿名の人物によって郵送された、「オデッサ」の支援を受けて海外へ逃亡したSS(ナチス親衛隊)隊員たちの、顔写真や詳細な住所を記録したファイルの通称にちなんでいる。

映画『ジャッカルの日』もそうだったが、フォーサイスの原作を受けて入念な考証を積み重ねて作られたフィルムは、リアリティ存分。

監督のロナルド・ニームといえば、映画『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)の監督をつとめて、大ヒット。

その次回作がこの『オデッサ・ファイル』なわけだが、どちらもアクション映画という点では共通しているが、かたや『ポセイドン・アドベンチャー』は大量の水と大がかりなセットを使用してのサバイバル、もうかたや『オデッサ・ファイル』は既存の屋内での、どちらかといえばだましだまされ人間対人間の息詰まるサスペンス。

ロナルド・ニーム監督が映画界入りしたのはあのヒッチコック監督の撮影助手を務めてとのことなので、サスペンスは得意分野なのだろう。

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