『スターリンの葬送狂騒曲』
2017年イギリス・フランス
原題:The Death of Stalin
監督:アーマンド・イアヌッチ
脚本:アーマンド・イアヌッチ
デヴィッド・シュナイダー
イアン・マーティン
ピーター・フェローズ
原作:ファビアン・ニュリ
ティエリ・ロビン
音楽:クリス・ウィリス
出演:スティーヴ・ブシェミ
サイモン・ラッセル・ビール
パディ・コンシダイン
ルパート・フレンド
ジェイソン・アイザックス
オルガ・キュリレンコ
マイケル・ペイリン
アンドレア・ライズボロー
ポール・チャヒディ
ダーモット・クロウリー
エイドリアン・マクラフリン
ポール・ホワイトハウス
ジェフリー・タンバー
『スターリンの葬送狂騒曲』イントロダクション
1953年、モスクワ。
スターリンの秘密警察NKVDは、20年にわたり恐怖でその支配力を保ってきた。
“敵”としてリストに載った者は粛清される。
その夜、ラジオの生放送でクラシック曲の演奏が終わろうとしていたころ、スターリンの関係者から、今夜の放送の録音が欲しいと連絡が入る。
録音はしていない。
立ち去ろうとする観客を強引に引き止め、録音のための再演をすることになったが、ピアニストが家族をスターリンから粛清されたことを恨みに思っており、再演を断る。
指揮者も帰ってしまった。
ラジオ局の担当者は大慌てで代わりの指揮者を探し、ピアニストには高額の報酬を払うことを約束し、何とか再演、録音にこぎつける。
録音されたレコード盤を入れた袋に、ピアニストは一通のメモを滑り込ませる。
レコード盤は執務室のスターリンのもとに届き、スターリンは満足げに曲を聞き始めるが、床に落ちたメモに気が付き、それを拾い上げる。
メモには、
「ヨシフ・スターリン、国を裏切り、民を破滅させた。その死を祈り神の赦しを願う。暴君よ」
と記してあった。
メモを読み上げたスターリンは笑い飛ばしたが、直後、意識を失い昏倒する。
翌朝、お茶を運んできたメイドが床に倒れたスターリンを発見、情報を聞きつけたソビエト共産党の幹部たちがわれ先に駆けつける。
いちばんにたどり着いたのは、NKVDの最高責任者ラヴレンチー・ベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)だった・・・。
ソ連の独裁者スターリンの死によって巻き起こるみにくい権力闘争をシニカルでユーモアたっぷりに描くブラックコメディー『スターリンの葬送狂騒曲』
レーニンの死後、29年の長きにわたり恐怖でソ連を支配した男ヨシフ・スターリンの死から物語は始まり、そこから始まる幹部たちの権力闘争が、皮肉たっぷりに描かれる。
映画はいかにも英国人が好みそうなブラックユーモアに満ちているが、原作はフランスのグラフィック・ノベル。
どれだけ歴史に忠実かはさておき、スターリンの死によって瓦解する体制と、幹部がそれぞれに自らの安全を画策し新しい体制を再構築しようとするさまは、コメディと言えどスリリングですらある。
とくに第一発見者のベリヤと、歴史的にはのちに書記長の座に就くフルシチョフの丁々発止のやり取り、ほかの幹部を懐柔するための裏工作など、「うーん、ソ連!」と唸らされる。
ロシアとしても痛いところを衝かれた映画であることはその態度から明白で(それゆえ皮肉の強烈さがわかる)、ロシア国内はもちろん、ソ連勢力家だったベラルーシ、カザフスタン、キルギスでも上映禁止となった。
ソ連史を勉強しなおしてもう一回見ると、面白さは数倍にもなるだろう。
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