『新幹線大爆破』
1975年東映
英語タイトル:The Bullet Train, Super Express 109
監督:佐藤純弥
脚本:小野竜之助
佐藤純弥
音楽:青山八郎
出演:高倉健
千葉真一
宇津井健
『新幹線大爆破』イントロダクション
北海道、夕張。
夜の国鉄、人気のない貨物列車停車場に忍び込んだ一人の男・古賀勝(山本圭)の姿があった。
古賀は貨物列車のうち一両に爆弾を仕掛けると、いずこともなく姿を消す。
翌朝の東京。
町工場の一室で電話が鳴った。
工場主の沖田哲夫(高倉健)が電話を取ると、相手は古賀であり、爆弾の設置に成功したことを告げる。
いっぽうで沖田は古賀に藤尾信次(郷鍈治)が警察に捕まったという。
沖田は古賀に「計画を決行しよう、今日しかない」と言った。
東京駅。
新幹線のホームに、東京発・博多行きの新幹線109号が停車している。
次々に乗り込むさまざまな乗客たち。
そこに博多に護送される藤尾の姿もあった。
運転士青木(千葉真一)は新幹線109号を粛々と定時発車させる。
鉄道公安課に一本の電話が入る。
沖田が公衆電話からかけたものだった。
「ひかり109号に爆弾を仕掛けた。その爆弾は時速80㎞になったとき自動的にスイッチが入る。それ以上のスピードで走っていれば爆発しないが、再び80㎞に減速すると爆発する仕掛けになっている」
そして沖田は夕張の貨物列車にも同様の爆弾を仕掛けていることを告げる。
新幹線運転指令室長の倉持(宇津井健)は「この言葉の通りなら、新幹線109号は、絶対に止めることはできない」と衝撃を受ける・・・。
主演・高倉健!次々と迫りくるサスペンスの傑作『新幹線大爆破』
『新幹線大爆破』は日本では意外と知られていない、サスペンスの傑作だ。
なにか不測の事態があれば、すぐに停車して乗客の安全を図るという「安全神話」も強固な新幹線。
これが止まることができない、止まれば爆発というスリル。
新幹線という日本にしかないインフラで起きる、日本にしか作れない映画。
新幹線109号には様々な災難が降りかかる。
途中、前車両が故障して停車、これを避けなければならなかったり、異常に気が付いた乗客たちもパニックを起こす。
犯人・沖田をはじめとする犯行グループ3人は、身代金を要求する。
この身代金を巡っての警察と沖田達の駆け引きもまた丁々発止、スリリングだ。
またこの『新幹線大爆破』はただスリルを追うだけの作品ではない。
沖田達犯行グループの三人のドラマがあり、警察にもドラマがあり、倉持(宇津井健)はじめとする新幹線運転司令室にも、当の新幹線109号にもドラマが用意されている。
止まることのできない新幹線をめぐって幾重にもドラマとスリルが張り巡らされ、最後まで続く駆け引きなどよくできた構成で、2時間半があっという間だ。
犯人役を高倉健が務めているのも珍しいが、千葉真一が新幹線運転手とアクションらしいアクションをしないのも珍しい。
ほかにも大物役者が顔をそろえている。
志村喬や竜雷太、岩城滉一や小林稔寺、黒部進などオールスターキャストと言ってもいい顔ぶれに加えて、丹波哲郎、北王路欣也、田中邦衛などの特別出演も贅沢。
公開時は興行収入は残念ながら芳しくなかったようだが、重厚なドラマと独特のサスペンスで海外ウケはよかった。
ヤン・デボン監督の『スピード』(1994年)などは、スピードを落とすとバスに仕掛けられた爆弾が爆発する、というアイデアなど、本歌取りしたとも思える作品もある。
『新幹線大爆破』の監督佐藤純弥が、黒澤明が撮るはずで流れた企画『暴走機関車』(1985年にアンドレイ・コンチャロフスキー監督で撮影・公開された)の関係者だったことから、ここからヒントを得たとも考えられるが、『新幹線大爆破』は新幹線のみならず、当時の東京の高速道路網などのインフラも活用しまくった作劇になっている。
もっと日本国内でも評価されてもいいサスペンス映画だと思うが、JR(旧国鉄)はやっぱりいい顔はしないかなあ。
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