『ボーダー』
1981年アメリカ
原題:The Border
監督:トニー・リチャードソン
脚本:デリク・ウォッシュバーン
ワロン・グリーン
デイヴィッド・フリーマン
音楽:ライ・クーダー
出演:ジャック・ニコルソン
ハーベイ・カイテル
ヴァレリー・ペリン
ウォーレン・オーツ
エルピディア・カリーロ
マニュエル・ビエスカス
ジェフ・モリス
マイク・ゴメス
シャノン・ウィルコックス
『ボーダー』イントロダクション
ロサンゼルスで警官をしていたチャーリー・スミス(ジャック・ニコルソン)は、なじみの工場でなあなあの違法移民労働者の取り締まりをおこない、その日も工場長と二人の労働者を見繕って逮捕した。
日々の仕事に疲れを感じていたチャーリーは、もっと良い暮らしを夢見るチャーリーの妻マーシー(ヴァレリー・ペリン)の勧めでテキサスの国境の町エルパソへ引っ越すことにする。
エルパソにはマーシーの親友サバンナと夫のキャット(ハーベイ・カイテル)がおり、チャーリーはキャットの紹介で国境警備隊の仕事に就く。
マーシーは夢に見たような新居に舞い上がっていた。
次々に新しい家具を買い浪費を重ねるマーシーに、ローンの不安におびえるチャーリーは不満を募らせていく。
いっぽう、川とフェンスをはさんで国境を越えたメキシコでは、赤ん坊を抱えた母親マリア(エルピディア・カリーロ)と弟のフアン(マニュエル・ビエスカス)が苦難の日々を過ごしていた。
巡回警備のなかで、アメリカに希望を抱き不法入国する人々の悲惨な状況を目の当たりにし、チャーリーは衝撃を受ける。
その国境地域の実状をチャーリーに教えてくれた相棒が、何者かに殺される事件まで起き、この地域の現状の混沌さを身に染みて感じるチャーリーだったが、川向うに赤ん坊を抱きかかえたマリアを見つけ、なぜか気にかかるようになる。
仕事に慣れ始めたころ、キャットが「おれと組んでひと稼ぎしよう」と、複業を持ち掛けてくる。
最初は不審に思い断っていたチャーリーだったが、妻の浪費に耐え切れず、キャットの申し出を受けることにする。
キャットの言う仕事とは、不法入国者たちをコントロールすることだった。
キャットは決められた数の不法入国者たちを国内に送っては日銭を取っており、縄張り争いもあった。
唖然とするチャーリーに現実を見ろというキャット。
そんなおり、マリアの赤ん坊が誘拐される事件が起き、それをきっかけにちょっとした暴動まで起きた。
縄張りを守るため人殺しまでするキャットをチャーリーは激しくののしり、マリアの赤ん坊を探し始めるが、キャットたちはチャーリーを引きずり込もうと幾重にも罠を張り巡らす・・・。
メキシコとの国境の町を舞台に、不法入国者の実態、アメリカの国境警備隊の腐敗を描くサスペンス・ヒューマン・ドラマの秀作『ボーダー』
ジャック・ニコルソンが国境警備隊員を熱演、1980年代を舞台に、不法入国の実態と、国境警備隊の腐敗を描く。
トランプ大統領が「壁」を作ろうと躍起に宣言しているメキシコとの国境の様子が、リアルに描写されている。
国境にはフェンスが建てられているものの、5キロおきには抜け穴があり、不法移民はダダ漏れの状態。
それを守るはずの国境警備隊員もなかば常態化して手が付けられない移民の流動を、見て見ぬふりをする。
個人の正義感や、一部隊の活躍ではどうにも解決できようもない。
アメリカ・メキシコ間の不法移民の問題は、格差の解消などもっと根深いところから取り掛からなければならない難問なのだ。
夢と浪費を同一視するチャーリーの妻アメリカ人のマーシーと、赤ん坊を抱え生活に苦しむメキシコ難民マリアが象徴的に対比されている。
主人公チャーリーは二人の間で揺れ動きながら、ほんの一握りの正義感を象徴する存在になっていく。
抜本的な解決にはならないけれども、「いつか・・・」という希望を残して物語は終わる。
少なくとも取り掛からねばならないのは、強固な「壁」を築くことではないだろう。
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