映画評『助太刀屋助六』名匠岡本喜八監督による人情味あふれる痛快娯楽時代劇

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『助太刀屋助六』
2002年東宝
監督:岡本喜八
脚本:岡本喜八
原作:生田大作『助太刀屋』
音楽:山下洋輔
出演:真田広之
   鈴木京香 
   村田雄浩
   岸部一徳
   仲代達矢
   岸田今日子

『助太刀屋助六』イントロダクション

その男、一風変わったことを生業としていた。

その日その時、手近にあったものを得物として戦った。

刃物は嫌いだった。

抜いたこともない。

いったい何事、と思ったときには、これはもう敵討ちと決めている。

義を見てせざるはなんだっけ、首をひねった時には、物干しざおを絞っていた。

この男、十七歳の時に故郷を飛び出して、江戸へ向かったが、途中、ひょんなことから敵討ちに巻き込まれ、助太刀をやってしまった。

そのときの、なんとも言えないいい感じ。

なにしろ、侍の野郎が俺に頭を下げやがった。

この俺にだ。

これが病みつき。

そのうえ、無理やり俺の手に何やら握らせやがった。

ずしり、めっぽういい感じ。

これがまた病みつきになって、以後七年。

敵討ちを探しながら、流れ流れた。

流れ流れて七年目、ある仇から、さる敵討ちに示談を・・・そう、金銭的話し合いを申し込まれた。

十五両。

大金である。

でもあぶく銭の、やらずぼったくりでもある。

だいいち、花の武士道はどうなる。

え? そこまで地に落ちた? まあいいか。

と、この男、いつしか鼻先を生まれ故郷の上州に向けていた。

とはいっても、誰かが待っているわけでもない。

待っているとすれば、五歳の時、三五歳の若さで亡くなったお袋の墓だけだが、ま、いいか。

この男、人呼んで、いや、人は別に呼ばないが、助太刀屋助六。

粋なヤクザのつもりである。

名匠岡本喜八監督による人情味あふれる痛快娯楽時代劇『助太刀屋助六』

他人の仇討の助太刀をなりわいとする男が、生き別れの父の死に遭遇し、初めて自分のために仇討ちに挑む姿を描く、岡本喜八監督の遺作となった痛快娯楽時代劇。

個性あふれる演出で知られる岡本喜八が、名俳優たちに何の躊躇もなくドタバタ演じさせるのだが、そのなかでもやはり主役の真田広之がよく動く。

もともとアクション俳優であるから不思議ではないのだけれど、よく走り、跳び、回る。

よく体が動くなあと思う一方、その動きが自然な感じがして良い。

つられてか他の俳優陣も良く動く。

活劇とはこういうものだ。

立ち回り御演じる男性俳優陣もそうだが、ヒロインの鈴木京香も負けてはいない。

棺桶に飛び込んだり、馬を乗り回したり、ほかの作品では見たこともないような演技を見せてくれる。

岡本喜八作品には常連の仲代達矢はもちろんだが、名前の出てこないワンカットだけの出演にも贅沢な布陣が。

竹中直人や嶋田久作、天本英世など、一瞬で出番が終わるのが何とももったいないくらい。

マンガ的な印象を受ける作風だが、さもありなん。

原作となった『助太刀屋』は1969年の雑誌「漫画読本」に掲載されたマンガで、これを執筆した生田大作は、誰あろう岡本喜八のペンネームであった。

岡本監督はかなりの技巧派で、クランクインの前にすべてのカット割りをコンマ秒単位で決め、撮影に臨んでいたといわれる。

この『助太刀屋助六』は山下洋輔による劇版も独特で、ジャジーながらも和のテイストがふんだんに盛り込まれた楽曲は、これまた作風にぴったりで、風吹きすさぶうらさびしい雰囲気から、大立ち回りの追いかけっこのシーンまで、どれも画像にマッチしている。

岡本喜八は205年に食道がんのため死去、この『助太刀屋助六』が遺作となった。

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