『フェイクシティ ある男のルール』
2008年アメリカ
原題:Street Kings
監督:デヴィッド・エアー
脚本:ジェイムズ・エルロイ
カート・ウィマー
ジェイミー・モス
主演:キアヌ・リーブス
『フェイクシティ ある男のルール』イントロダクション
ロス市警の風紀取締り課の警官であるトム・ラドロー(キアヌ・リーブス)は、囮捜査や、犯人を見つけても逮捕せず射殺するなど、違法すれすれのダーティな捜査で事件を解決していた。
彼の尻拭いは、ラドローを買っている上司のワンダー(フォレスト・ウィテカー)の仕事で、ワンダーだけがラドローを認めていた。
とあるコリアンタウンで、誘拐された二人の少女を救助するも、ラドローは相変わらずの手法で犯人たちを射殺。
自身も撃たれて負傷し、病院で手当てを受ける。
そこに内務調査班のビックス(ヒュー・ローリー)がラドローに接触してきた。
ビックスはラドローの事件解決とその違法性についての調査に取り組んでいたようだった。
翌日、ラドローは元パートナーであるワシントン(テリー・クルーズ)とビックスが密会していることを知る。
半ば怒りにかられたラドローは、ワシントンを尾行する。
二人が接触したコンビニで、その時、強盗事件が起こる。
ラドローとワシントンは銃撃戦に巻き込まれ、無残にもワシントンはラドローの目の前で射殺されてしまった。
ワシントンを殺した二人の強盗を追いたいラドローだったが、ワンダーはこの事件の真相を闇に葬るという。
ワンダーいわく、ワシントンの車から大金と、麻薬が見つかったこともあり、ワシントンは麻薬売人とのいざこざで殺されたのだと。
ワンダーはさらに防犯カメラの記録映像にラドローが映っているのを見ると、映像が記録されたディスクを処分、証拠隠滅をラドローに促す。
ラドローは、ワシントンを殺した強盗が、本当はラドローの殺害を目的にしていた殺し屋だったのではないかと疑い、独自に事件を追い始める。
事件を担当する刑事ディスカント(クリス・エヴァンズ)を巻き込み、独自のやり方で事件の捜査を始めるラドロー。
しかし事件は、想像をはるかに超える闇の形相を見せ始める・・・。
描かれるロス市警の腐敗と『フェイクシティ』の「フェイク」とは?
ベテラン警官の孤独な戦いと葛藤を描いた本作。
あまりに凶悪な事件が多発するロスにおいて、事件解決のためには手段を択ばないという独自のルールを貫くトム・ラドロー。
これまでキアヌ・リーブスが演じてきた主人公の中でももっともダーティな役だ。
犯人は捕らえるのではなく殺す。
そして証拠捏造までする。
ヒーローというには眉をひそめるその主人公像だが、超法規的な彼のやり方を隠すために、ロス市警でだラドローの所属チームが組織ぐるみでそれを肯定する描写が入り始めるころ、視聴者である我々は、この正義であるはずの警察組織に疑惑を感じ始める。
元相棒ワシントン殺害事件について調べるうちに、敵が警察組織内にいることがわかってくる。
正義であるべきのロス市警の腐敗と内部抗争がしだいにエスカレート。
この街では正義はフェイク(でっちあげ)されているのだ。
脚本にジェームズ・エルロイの名前があるのをみると、ははん、と察するところがある。
ジェームズ・エルロイといえば『L.A.コンフィデンシャル』。
1950年代のロス市警の内部腐敗を描いた犯罪小説・映画だ。
くしくも『フェイクシティ』の公開同年の2008年、クリント・イーストウッド監督の『チェンジリング』でもロス市警の腐敗ぶり(こちらの舞台は1930年代)が描かれている。
われわれ日本人にはピン来ないが、ロス市警の闇はどうも長年の問題のようだ。
その中で強固な意志で自分のルールを貫く主人公ラドローの戦いは、壮絶かつ孤独である。
世間の評価は中の中、映画ファンの中でもあまり口の端に上らない作品、といったところだが、練りに練られた脚本と、ここでは書けないが衝撃的なクライマックス。
隠しておくにはもったいない良作だ。
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