映画評『プライベート・ライアン』徹底的に戦闘シーンを作りこんだ戦争映画のマイルストーン

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『プライベート・ライアン』
1998年アメリカ
原題:Saving Private Ryan
監督:スティーブン・スピルバーグ
脚本:ロバート・ロダット
   フランク・ダラボン
主演:トム・ハンクス

『プライベート・ライアン』イントロダクション

第二次世界大戦も佳境。

連合軍はドイツ占領下のノルマンディーへの上陸作戦を成功させるが、そんななか、アメリカ陸軍参謀総長ジョージ・マーシャル(ハーヴ・プレスネル)のもとにある報告が入る。

それはライアン家の4兄弟のうち、3人が戦死、残る末っ子のジェームズ・ライアン(マット・デイモン)は敵地で行方不明だという。

マーシャルは部隊を組織してジェームズ・ライアンを救出、無事アメリカ本国に帰還させるようにと命令を下す。

その命令はレンジャー大隊のジョン・ミラー大尉(トム・ハンクス)が受けることになる。

ミラー大尉はホーヴァス(トム・サイズモア)、ライベン(エドワード・バーンズ)、ジャクソン(バリー・ペッパー)、メリッシュ(アダム・ゴールドバーグ)、カパーゾ(ヴィン・ディーゼル)、ウェイド(ジョバンニ・リビシ)の部下を6名選抜、また歩兵師団から通訳としてアパム伍長(ジェレミー・デイビス)を引き抜き、フランスの内陸部へと向かう。

いまだドイツ軍の勢力範囲内で、いくつかの交戦を繰り返し、仲間を失い、ミラー大尉たちはライアンの手がかりを探る。

ミラー大尉は部隊内の不和を克服しながら、任務を遂行すべく先へ進むのだったが・・・。

“リアルな戦争映画”を極めたマイルストーン的映画『プライベート・ライアン』

なんといってもこの作品は“リアルな戦争映画”。

冒頭の20分にも及ぶ連合軍上陸作戦の描写は、飛び交う弾丸、飛び散る血肉、ちぎれる手足、飛び出る内臓、炎に包まれ焼死する兵士、真っ赤に染まる海の水など、実に生々しく、これまでにない戦争映画となった。

グロテスクな描写が苦手な人はちょっと・・・けっこうつらい映画である。

また、撮影にあたりスピルバーグはトム・ハンクスら出演者たちに海兵隊のブートキャンプと同等の訓練を受けさせている(マット・デイモン除く)。

米軍の装備は言うまでもなく、ナチスドイツ軍にいたっても、兵器・車両は可能な限り本物が使用されている。

後半に登場するティーガーなどは、できるだけ似せてはいるが、こちらは残念ながら撮影に使えるような現物がないため、ソ連戦車のT-38を改造したものが使用されている。

監督のスピルバーグと主演のトム・ハンクスは、『プライベート・ライアン』製作後も共同でテレビシリーズの『バンド・オブ・ブラザーズ』『ザ・パシフィック』で同じく第二次世界大戦をテーマにしたリアルなドラマを製作しており、『プライベート・ライアン』で使用された舞台美術や兵器類が再び活躍している。

冒頭20分の戦闘シーンに限った話ではなく、このあとの村での戦い、橋での攻防戦など、けっこうな時間を戦闘シーンに割いている。

映画の尺が3時間にも及ぶが半分くらいはドンパチな印象。

よって難しいストーリー展開はない。

連合軍がドイツ軍に勝った、ライアン救出の使命達成、やったー! という能天気な明るい作品ではないけれども。

ドイツ兵捕虜を射殺するかどうかの葛藤とか、同じチーム内での意見の相違からくるドラマとか、そういったものはあるにはあるけれども、ストーリーに最低限必要な味付け。

人間同士戦争してれば、それはあるでしょうという、やはり“リアルな戦争映画”のためのドラマシーン。

アカデミー賞で11部門ノミネート、うち監督賞、編集賞、撮影賞、音響賞、音響編集賞の5部門を受賞しているが、監督賞以外は視覚効果寄りの賞ばかりなのが、『プライベート・ライアン』は目と耳で楽しむ映画だと評価されている証拠なのである。

戦争という重いテーマをないがしろにしているわけではないけれども、重点はやはり、「リアルな戦闘の描写」であり、深いドラマについては本作では追及していなかったのだろう。

そういえばスピルバーグは『プライベート・ライアン』の前に『シンドラーのリスト』を撮っている。

重いテーマについてはそこでやったから、次は視点を変えてみた、といったところか。

こちらの作品もどうぞ!
≫映画評『シンドラーのリスト』スピルバーグによるホロコーストを描いた歴史的作品

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