映画評『真田幸村の謀略』東映オールスターで描く一大歴史スペクタクル

サムライ 映画評
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『真田幸村の謀略』
1979年東映
監督:中島貞夫
主演:松方弘樹

『真田幸村の謀略』イントロダクション

関ヶ原の合戦で石田三成に勝利した徳川家康(萬家錦之助)は、三成の頭蓋骨を金色に塗り、盃として酒宴でさらしものにする。

その三成の勢力に加わっていたため、父・真田昌幸(片岡知恵蔵)とともに九度山に蟄居(ちっきょ)させられていた真田幸村(松方弘樹)。

家康を討つため再起を狙う幸村のもとに、同様に家康にしいたげられた浪人や草のもの(忍者)たちが集結。

幸村は様々な家康暗殺の謀略を巡らせる。

いっぽうの家康も昌幸を暗殺、幸村にもその毒手を伸ばさんと画策していた。

幸村の暗殺計画を逆手に取った家康は、それをきっかけに豊臣勢への言いがかりをつけ、情勢は次第に大阪冬の陣へと向かっていく・・・。

超豪華!東映オールスターキャストで贈る“真田十勇士”

真田幸村を務める松方弘樹は時代劇ならず当時のスター俳優。

ここに集う十勇士の面々もすごい。

霧隠才蔵:寺田農

猿飛佐助:あおい輝彦

海野六郎:ガッツ石松

望月六郎:野口貴史

筧十蔵:森田健作

穴山小助:火野正平

由利鎌之助:岩尾正隆

根津甚八:岡本富士太

三好伊三入道(尹三英):真田広之

三好清海入道(ジュリアおたあ):秋野暢子

と第一線の役者・タレントが集結。

わきを固めるベテラン勢も徳川家康の萬家錦之助や、加藤清正役に丹波哲郎など贅沢。

東映の熱意が伝わる配役である。

それにしても三好清海入道を女性にするとはアレンジが21世紀ライトノベルか。

歴史戦国ファンタジー『真田幸村の謀略』

物語は基本的に歴史に準じて進んでいくのだが、随所に映画的脚色が入る。

冒頭、銀河が衝突して巨大な火球が生まれるシーンなどは「あれッ? SF映画見てたんだっけ?」と一瞬不安になる。

その火球は日本列島をかすめ、落下するのだが、これから起こる波乱のファンファーレなのだ。

真田十勇士も本来は歴史上の人物たちではない。

そもそも真田十勇士は江戸時代の講談を経て明治、大正期に成立したフィクションである。

そのフィクションの十勇士がさらに映画では破天荒さを増している。

猿飛佐助がその最たるものだろう。

なんとラストシーンでは自らが火球となって天に飛び去る。

派手さで言えばクライマックスの大坂夏の陣からの十勇士による家康追討のシーケンスも相当だ。

戦隊ものや仮面ライダーシリーズよろしくドッカンドッカン爆発が起きる。

(そういえば戦隊ものもライダーも東映だ)

吹き飛ぶ雑兵たち、騎馬もどんどんつんのめって倒れまくる。

昭和のエンターテインメントである。

史実なんて二の次だ。

史実通りだと主人公の真田幸村の本懐は遂げられない。

幸村の本懐とは、にっくき家康を討ちとること。

せっかくの娯楽映画なのだ。

主人公が目的を果たさずしてどうする。

そう、この映画では幸村の本懐がかなうのだ。

家康を追い詰めた幸村。

ついに幸村は家康の首を撥ねる。

スパーンと。

見ていてください。

笑うほどすっ飛びますから、家康の首が。

史実との整合性はナレーションで取ります。

家康の死は伏せられ、一年の後やっと病死として公にされる、と。

よし! これで史実に沿いつつ、娯楽時代劇としても本懐が果たせたナイスな脚本!

と、スタッフが言ったかどうかは知らないが。

ある歴史小説家の有名なセリフがある。

「史書に『無かった』と書かれていないかぎり、それはあったかもしれないのだ」と。

つまり何らかの歴史書に「真田十勇士などいなかった」と書かれていないかぎり、十勇士はいたかもしれないし、「幸村は家康を討ち果たさなかった」と書かれていないかぎり、幸村は実は家康を打ち取っていたかもしれないのだ。

時代劇とはそうしたスキマの設定をうまく使ったものが、面白い作品になる。

『真田幸村の謀略』も史実にうまく乗っかりつつ、ファンタジーとしての娯楽時代劇の本懐を果たしている。

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