映画評『武士の家計簿』加賀藩御算用者である下級武士・猪山直之は家業の算盤の腕を磨き出世するが、親戚づきあい、養育費、冠婚葬祭と、武家の習慣で家計は火の車だった・・・

映写機 映画評
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『武士の家計簿』
2010年アスミック・エース
監督:森田芳光
脚本:柏田道夫
原作:磯田道史『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』
音楽:大島ミチル
出演:堺雅人
   仲間由紀恵
   伊藤祐輝
   大八木凱斗
   桂木悠希
   松坂慶子 
   草笛光子
   中村雅俊
   西村雅彦
   嶋田久作

『武士の家計簿』イントロダクション

時は江戸時代、天保年間。

加賀藩金沢城の算用場では、百人を超える算用者が今日もそれぞれが黙々とそろばんをはじいて、そのぱちぱちという音が部屋中に響き渡っている。

算用者とは藩の理財会計を司る、いわば経理担当であるが、加賀百万石ともなればこの人数が必要だった。

しかしその大半は、薄給の下級武士で構成されていた。

その中に猪山直之(堺雅人)もいた。

父の信之(中村雅俊)の息子で、猪山家の八代目だ。

信之は江戸に勤務中に功績を上げたことから七十石取りに出世したことが自慢。

直之は見習いのころからそろばんが得意で、周囲があきれて“そろばん馬鹿”と呼ぶほど。

そんな直之も年頃になると、縁談の話が舞い込んでくる。

相手は町同心で剣術道場を開いている西長与三八(西村雅彦)の娘、駒(仲間由紀恵)だ。

与三八は駒に、直之のことを「剣術の腕はからきしの算用者だが、面白いかもしれん」と紹介する。

そのころ、日本各地ではのちに「天保の大飢饉」としてふりかえられる飢饉が起きており、加賀藩もその例に漏れなかった。

農民を救うために、藩からお救い米が放出されることになるが、このとき御蔵米の勘定方になった直之は、思わぬ騒動に巻き込まれることになる。

配給するお救い米の量が実際と帳簿で合わず、米が不足だった。

直之は自ら帳簿を調べ上げ、米蔵をめぐり、過去、恒常的に不正が行われていることを突き止めたのだった。

だがそれを上役に訴え出ても、「余計なことをするな」と、事を荒立てたくない上役は取り合わない。

「帳簿の最初と最後の帳尻があっていればそれでよい」

という上役の言葉は、直之にとってはどうにも我慢ならなかった。

不正が行われていたというより、数字が合わないことが放置できなかったのである。

直之は上役の言葉にもかかわらず、独自で調査を進めていたが・・・。

加賀藩御算用者である下級武士・猪山直之は家業の算盤の腕を磨き出世するが、親戚づきあい、養育費、冠婚葬祭と、武家の習慣で家計は火の車だった・・・『武士の家計簿』

歴史学者でテレビでもおなじみの磯田道史先生が、古書店で入手した猪山家の約37年間に及ぶ入払帳や書簡をもとに、幕末下級武士の家庭の日常生活や武士階層の風習を分析し記したノンフィクションを原作に、脚色し映画化したもの。

加賀藩という巨大組織の中で、御算用者として働いていた猪山直之は算盤の腕を磨き、出世をしていくが、武士ならではの親戚づきあい、子供の養育費、冠婚葬祭など、薄給の割にかさむ費用に、家計は火の車だった。

主人公猪山直之は、家長となると厳密なそろばん勘定の腕を発揮しつつ、質素倹約に家族ぐるみで挑み、10年以上の年月をかけて借金を完済していく。

映画公開時のキャッチコピーは、「かつて、刀ではなく算盤で家族を守った武士がいた」というもの。

その言葉通り、実在した“家計簿”からひも解かれた、一人の節とその家族にまつわる物語を、森田芳光監督が静かに、丹念に描いている。

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