映画評『プラトーン』ベトナム戦争の悲惨な有り様を描いた映画

映写機 映画評
スポンサードリンク

『プラトーン』
1986年アメリカ
原題:Platoon
監督・脚本:オリバー・ストーン
音楽:ジョルジュ・ドリュルー
出演:チャーリー・シーン
   トム・ベレンジャー
   ウィレム・デフォー

『プラトーン』イントロダクション

1967年。

アメリカはベトナム戦争の真っ最中であった。

白人青年のクリス(チャーリー・シーン)は、次々と徴兵されていく同年代の若者たちのほとんどが、黒人や少数民族などの貧しい層の者たちだったことに不公平だと感じており、大学を中退してまで戦争に志願した。

だが、いきなりカンボジア国境付近の最前線に配置されたクリスにとって、本物の戦場は想像を超えてあまりに過酷なものだった。

小隊長のバーンズ(トム・ベレンジャー)は冷酷非情の男で、何度も死線をくぐり抜けてきた。

いっぽう班長のエリアス(ウィレム・デフォー)は戦場にありながら無益な殺生を嫌う。

そのほかさまざまな個性的な面々にかこまれ、13人の部隊は戦場に投げ込まれる。

ある日、ベトコンの基地と思われる小さな村を発見した部隊だったが、情報を提供しようとしない村人に怒ったバーンズが、村人を銃殺する。

その非情な行いにエリアスは、バーンズに「軍法会議にかける」と怒りをぶつけ、二人の対立は決定的となってしまった。

日ごろからエリアスの平和主義的言動を快く思っていなかったバーンズは、エリアスが単身、斥候に出ているあいだに後を追い、彼を背後から射殺してしまう。

やがて部隊はベトコンとの大きな戦闘の波にのまれていく・・・。

ベトナム戦争の悲惨な有り様を描いた映画『プラトーン』

オリバー・ストーン監督が自らの従軍の経験をもとに、ベトナム戦争の悲惨さを描いた作品。

作品の解説はこれに尽きる。

無抵抗のベトナム民間人への虐待や虐殺、強姦をはじめ、アメリカ兵たちのあいだで広がる麻薬、仲間同士での殺し合いなど、戦争中起きたとされる非道がこの映画では包み隠さず描かれている。

同じベトナム戦争を描いた作品として有名なのは、フランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』(1979年)があるが、こちらは戦争の狂気を描いたものではあるが、どちらかといえば人間個人の暗部に踏み込む観念的な作品。

またマイケル・チミノ監督の『ディア・ハンター』もベトナム戦争ものとされるが、どちらかといえばこの作品は主人公が戦争で負った精神的トラウマを描いたものである。

『プラトーン』のようにベトナム戦争中の人間の本能的悪行を描いた作品としては、1989年のブライアン・デ・パルマ監督の『カジュアリティーズ』などがある。

『プラトーン』は主人公が戦争の狂気の大きなうねりに飲み込まれてしまうが、『カジュアリティーズ』の主人公は戦争犯罪を告発する内容になっている。

興味がある方はご覧になってはいかがだろうか。

≫映画評『カジュアリティーズ』

≫映画評『地獄の黙示録』

『プラトーン』は傍観者ではいられない主人公の悪夢を描く

戦争という極限状態において、いかに人間の倫理観ははかないものであるのか。

主人公は恵まれた環境で育ち、貧富や差別に対する義憤に駆られ戦争に参加する。

だが泥沼と呼ばれるベトナム戦争では、そんなことは関係なかった。

敵味方の境界すらもあやふやになっていく状況に、全員が叩き込まれ、判断力をゆがめていくのである。

生き残るために鬼となるバーンズが正しいのか、最低限の倫理を貫こうとするエリアスが正しいのか・・・。

生き残るのが是であるならば、味方であるエリアスを憎み殺すバーンズの行動は、あるいは是である。

エリアスは戦場で生き残るには甘すぎたのかもしれない。

戦場は人間の本能をむき出しにする。

疑惑と憎悪が渦巻き、誰を相手にしているのかわからなくなる。

主人公のクリスは、何もできない。

だがしだいに、傍観者でいることすら許されなくなる。

泥沼に引きずり込まれたら、傍観者でいることすらできなくなるのだ。

こちらの作品もどうぞ!
≫映画評『父親たちの星条旗』硫黄島二部作のアメリカサイドを描くイーストウッド監督の戦記映画

コメント

タイトルとURLをコピーしました