映画評『パッセンジャー』眠る乗客5000人、目覚めたのは二人だけ。SF恋愛サスペンス

映写機 映画評
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『パッセンジャー』
2016年アメリカ
原題:Passengers
監督:モルテン・ティルドゥム
脚本:ジョン・スペイツ
音楽:トーマス・ニューマン
出演:クリス・プラット
   ジェニファー・ローレンス
   マイケル・シーン
   ローレンス・フィッシュバーン

『パッセンジャー』イントロダクション

宇宙移民船アヴァロン。

宇宙移民を目的としたこの船には、5000人の乗客(パッセンジャー)が人工冬眠状態で乗せられていた。

目的地はホームステッドⅡ、あらゆる計器はオートマティックコントロールされており、片道120年の旅だった。

アヴァロンは進行路上にあった小惑星帯に突っ込んでしまう。

システムに一時的な過負荷がかかり、一基の人工冬眠ポッドが故障、そこに眠っていたジム(クリス・プラット)だけが目覚めてしまった。

ふたたび冬眠ポッドで眠ることは不可能、くわえてアヴァロン号がホームステッドⅡに到着するには、あと90年かかることが判明。

ジムはアヴァロンの中で孤独な余生を送らざるを得ない。

地球へ助けを求めるメッセージも、返事が届くまで55年。

乗務員ではない植民者のジムは、宇宙船のコントロールにアクセスする権限も持っていない。

たった一人の、絶望の一年が過ぎていった。

唯一の話し相手となったのは、船内のバーで稼働していたアンドロイドのバーテンダー、アーサー(マイケル・シーン)。

ジムはホームステッドⅡ内にあるスイートルームをこじ開け独占、船内のエンタテイメント設備でもてあました時間をつぶす、自堕落な生活を続けていた。

ある日、ジムは冬眠ポッドで眠る一人の女性に目をとめ、一目惚れしてしまう。

彼女はオーロラ(ジェニファー・ローレンス)という作家だった。

ジムはオーロラを目覚めさせたい気持ちに駆られる。

だがそれは彼女の人生を奪うことを意味する。

長い葛藤の末、ジムはジェニファーの冬眠ポッドに近づく・・・。

乗客5000人に、目覚めたのは二人だけ。SF恋愛サスペンス『パッセンジャー』(ネタバレ有)

宇宙移民船という閉鎖された空間で、5000人のうちたった二人目だけが覚めてしまった、というサスペンスタッチのSFドラマだ。

主要登場人物はほぼジムとジェニファーと、アンドロイドのアーサーという二人と一体という、極めてシンプルな構図。

ジェニファーは故意にジムによって目覚めさせられてしまうが、それを知らないジェニファーはジムと恋に落ちてしまう。

真相を知るのはジェニファーを目覚めさせたジム本人と、ジムの話し相手を務めていたアーサーだけだ。

ジムはジェニファーとの関係を深めていくが、やがて秘密はばれる。

破局を迎える二人の関係だが、そもそもジムを目覚めさせたきっかけとなる宇宙船の故障が、やがてエスカレートし、二人はケンカどころではなくなる。

ストーリーはこのようにサスペンス → ラブロマンス → SFアクションとうつっていくわけだけれども、全自動制御されているはずの宇宙船という設定で、ジムたった一人が目覚め、フォローアップができないシステムというのはどうなんだろう~とモヤモヤしてしまう。

後半にも決定的なダメージを宇宙船アヴァロンは抱えていることが明らかになってくるのだけれども、それもダメージコントロールが甘いと感じざるを得ない。

5000人が眠る全長1㎞を超える宇宙船なのに、リアクターシステム(動力)が小さすぎるのも気になった。

そんなふうに細かいところではツッコミがあるのだが、宇宙船アヴァロンのらせん状の船体デザインとか、スタートレック調の内部インテリアデザインは美しい。

主演を務める二人も文句ない。

ジム役のクリス・プラットは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスター・ロード役で主演を務め、同じ役でマーベル・ユニバースの映画シリーズで多数出演。

2015年にはアメリカのタイム誌が発表する世界で最も影響力のある100人のリスト「タイム100」に選ばれている。

2017年にはハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに名前が刻まれた名実ともに名優。

ジェニファーローレンスも17歳の時にギジェルモ・アリアガ監督の『あの日、欲望の大地で』(2008年)で「メリル・ストリープの再来」と評され、第65回ヴェネツィア国際映画祭で新人俳優賞を受賞、『世界にひとつのプレイブック』(2012年)で第85回アカデミー賞主演女優賞を受賞する演技派。

約120分の映画のうち、ほとんどこの二人で間がもつのは二人の演技力のたまもの。

SFとか細かい設定はどうでもいい、極限状態の男女のラブロマンスが見たい、という方におすすめの映画だ。

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