映画評『ウエスタン』セルジオ・レオーネ監督の西部劇の金字塔!

夕焼けとカウボーイ 映画評
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『ウエスタン』
1968年イタリア・アメリカ
原題:C’era una volta il West
英題:Once Upon a Time in the West
監督:セルジオ・レオーネ
脚本:セルジオ・レオーネ
   セルジオ・ドナティ
   ミッキー・ノックス
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:チャールズ・ブロンソン
   クラウディア・カルディナーレ
   ヘンリー・フォンダ
   ジェイソン・ロバーズ

『ウエスタン』イントロダクション

昔々、うら寂しい西部のアリゾナのある駅。

そこで何者かを待ち構える三人のギャングたちがいた。

三人はロングコートを身にまとい、いずれも腕が立ちそうだ。

やってきた汽車に殺気のこもった視線を送る三人。

だが、誰も降りてこない。

ふむ・・・と振り返る三人。

出発する汽車。

通り過ぎる汽車の背後から、不意にハーモニカを吹く謎のガンマン(チャールズ・ブロンソン)があらわれる。

はっと気が付く三人のギャングを、「ハーモニカ」のガンマンはあっという間に射ち殺すのだった。

ところ変わって荒野の一軒家。

そこでは、開拓者のブレット・マクベイン(フランク・ウルフ)が再婚する花嫁を迎える準備を一家総出でしていた。

そこに響く銃声。

現れるロングコートの男たち。

マクベイン一家は皆殺しにされてしまう。

そのうちの一人は仲間からフランク(ヘンリー・フォンダ)と名前を呼ばれた。

フランクは現場を偽装し、事件を山賊のシャイアン(ジェイソン・ロバーズ)一味に罪をかぶせる。

アリゾナに着いたブレットの新妻ジル(クラウディア・カルディナーレ)は復讐を決意。

また罪をかぶせられたシャイアンも事件の真相を追い、そして謎の男「ハーモニカ」もフランクを追っていた・・・。

セルジオ・レオーネ監督の西部劇の金字塔『ウエスタン』

クリント・イーストウッド主演で大当たりしたマカロニ・ウエスタン「ドル箱三部作」(『荒野の用心棒』『夕日のガンマン』『続・夕日のガンマン』がハリウッドにのぞまれ、西部劇への思い入れたっぷりに制作したのがこの『ウエスタン』だ。

「ドル箱三部作」で西部劇はやりつくした、と思っていたセルジオ・レオーネだが、この『ウエスタン』ではその「ドル箱三部作」では控えていたアプローチで『ウエスタン』を撮る。

それは、かつての西部劇が持っていた抒情性だ。

今回の『ウエスタン』では、たっぷりと間をとった演出をしている。

最初のシーケンスなど、主役のチャールズ・ブロンソンが出てくるまで15分もかけている。

それまで丹念に、丹念に、三人のやられ役ギャングを描写し、やって来る汽車を描写し、出発する汽車の背後からブロンソンが現れるのをしっかり時間を取って描写する。

そしてブロンソンが三人のギャングを斃すのは一瞬だ。

この静と動のメリハリはレオーネらしい。

ほかにも未亡人となったジル(クラウディア・カルディナーレ)の悲しみにもたっぷり時間をかけている。

また作品全体をとおして感じられる物寂しさは、レオーネの西部劇への愛惜、別れのあいさつでもある。

作中の時代設定は鉄道がどんどん敷設され、フロンティアが無くなりつつある西部開拓時代末期だ。

登場するハーモニカ、フランク、シャイアンの三人は、「ドル箱三部作」でも見受けられるレオーネ監督お得意の三者対立構図のキャラでもあるが、「ドル箱三部作」のような明るさはない。

居場所を失いつつあり、去らねばならない時代錯誤の男たちなのである。

今度こそやりたいことをやりつくしたレオーネが撮った西部劇は、『ウエスタン』が最後になる。

この作品の英語タイトル「Once Upon a Time in the West」(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト)は、「昔々、西部で・・・」という意味だが、まるで神話や昔話の語りだしのようである。

レオーネが、西部劇のすべてを詰め込んだ、そんな普遍的な物語映画が『ウエスタン』なのである。

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