『ニノチカ』
1939年アメリカ
原題:Ninotchka
監督:エルンスト・ルビッチ
脚本:メルヒオル・レンジェル
チャールズ・ブラケット
ビリー・ワイルダー
ワルター・ライシュ
原案:メルヒオル・レンジェル
音楽:ワーナー・R・ヘイマン
出演:グレタ・ガルボ
メルヴィン・ダグラス
アイナ・クレア
シグ・ルーマン
フェリックス・ブレサート
アレクサンダー・グラナック
ベラ・ルゴシ
『ニノチカ』イントロダクション
物語の舞台は、よき時代のパリ。
“サイレン”が意味するのは警報ではなく美声の人魚。
消灯と空襲は無関係だった、そんな時代の物語である。
とある高級ホテルに、どうもみすぼらしい身なりのロシア人が入ってくる。
ホテルの支配人は案内しようとするが、「見てるだけ」とそのロシア人はすぐに出ていく。
それが三人続いた。
三人はアイラノフ(シグ・ルーマン)、ブリヤノフ(フェリックス・ブレサート)、コパルスキー(アレクサンダー・グラナック)、これでもソ連の貿易商の役人で、とある使命を帯びてパリにやってきたのだった。
大金を使うのははばかられるが、どうしても高級ホテルに泊まってみたい三人は、あれこれ相談のうえ、このホテルの最上級スイートルームに泊まることにする。
三人の使命とは、ロシア革命で没収したロシア大公女スワナ(アイナ・クレア)の宝石を売却、食糧危機に対処するための外貨獲得だった。
たまたまそのホテルでホテルマンとして働いていたスワナの忠臣ラコーニン伯爵が、三人が所持しているのが大公女の者であることを知り、急いでスワナに知らせる。
スワナは大急ぎで弁護士に連絡を取るが、ソ連相手の訴訟には弁護士も及び腰だ。
そこにスワナの愛人レオン・ダルグー伯爵(メルヴィン・ダグラス)が助け舟を出すことにする。
レオンはホテルの三人を訪れ、裁判所に宝石の不当所持を申し立て、売買・移動の禁止を訴えた、と口早に話し、三人の懐柔を図る。
やがて部屋からは楽しそうな声が聞こえてくる。
ホテルマンは次々に食べ物を運び、煙草売りの女性が部屋に出はいりする。
三人はすっかりレオンに懐柔された。
さて三人の仕事が遅れているため、ソビエト当局はゴリゴリの共産主義者ニノチカ(グレタ・ガルボ)をお目付け役の特命全権大使として派遣してきた。
ニノチカと三人は合流するが、三人はすっかり資本主義の世界に飲まれている。
ホテルのショップで女性用の奇抜な帽子を見て、ニノチカは「あんな帽子を女性にかぶせる文明は滅びる」という。
そんなニノチカとレオンが街中で出会った。
資本主義を体現するようなレオンのことをニノチカは軽蔑するが、美女であるニノチカをプレイボーイのレオンは放ってはおかなかった・・・。
ソ連からパリにやってきた堅物の女性と、プレイボーイの伯爵との恋と大騒動を、名匠エルンスト・ルビッチ監督が描く風刺に富んだ傑作コメディー!『ニノチカ』
大女優グレタ・ガルボが出演した初のコメディ映画。
ソビエト連邦を風刺した作品で、公開当時資本主義の大国として君臨していたアメリカでは、まだソ連の貧乏主義を笑い飛ばせるだけの余裕があった。
「笑わない女優」と呼ばれていたグレタ・ガルボが大笑いするシーンがあることから、公開当時は「グレタ、笑う」というキャッチコピーが使われた。
グレタのキャリア末期にそういった新境地を開いたことでも、この『ニノチカ』は見逃せない古典的名作とされている。
じっさい四角四面の共産主義に凝り固まったニノチカが、しだいにその表情を溶かしていき、レオンとの恋に落ちるさまを見事に演じるグレタの姿は名演であり、こんなに彼女の笑顔が魅力的だったかと気づかせる。
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