映画評『マネーモンスター』ジョディ・フォスター監督の金融サスペンス

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『マネーモンスター』
2016年アメリカ
原題:Money Monster
監督:ジョディ・フォスター
音楽:ドミニク・ルイス
脚本:ジェイミー・リンデン
   アラン・ディ・フィオーレ
   ジム・カウフ
主演:ジョージ・クルーニー
   ジュリア・ロバーツ

『マネーモンスター』イントロダクション

財テク番組「マネーモンスター」の司会リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)は、その巧みな話術で株価予想や視聴者への助言で人気を博していた。

アドリブが得意なリーは、いつものように番組ディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)の指示を聞かず、生放送が始まった。

今回のネタは、数日前に株価が急下落したアイビス・キャピタル社。

アイビス社は今回の株価急落の原因は、HFT(高頻度取引)と呼ばれる電子取引のアルゴリズムのバグだと説明。

社長のウォルト・キャンビー(ドミニク・ウエスト)へのインタビューを予定していたが、キャンビーの搭乗するジェット機の到着遅延、番組に出演できず、代わりに広報担当のダイアン(カトリーナ・バルフ)が出演することになっていた。

だが、饒舌に番組を侵攻するリーの背後から、配達員に扮した男が現れ、天井に向かって一発、銃を発砲する。

最初スタッフも警備員も、リーの仕込みかと訝しんだが、すぐにそうではないことがわかる。

その男――カイル(ジャック・オコンネル)は、「マネーモンスター」の番組内で、リーが「銀行預金よりも安全」と言った言葉を信用してアイビスに投資したが、今回の下落で全財産を溶かしてしまったのだ。

しかしカイルは「この暴落は意図的で、情報操作が行われている」と主張。

アルゴリズムのバグなどではなく、本当の原因を説明しろ、と迫り、リーに爆弾を背負わせる。

リーを救うため、パティは必死でアイビス株下落の真の原因を探り始めると、そこには金融業界のブラックボックスが浮かび上がってくるのだった・・・。

金融業界の素人でも楽しめる上質サスペンス『マネーモンスター』

自らも名女優として名をはせたジョディ・フォスターも、この『マネーモンスター』では監督4作目(テレビシリーズ除く)、堅実なサスペンス映画を撮っている。

ウォール街の金融ものでしかもサスペンス、となると、視聴者はある程度の基礎知識を要求されるのではないかと思ったが、そんなことはなく、特に専門用語を知らずとも楽しめるシナリオになっている。

ひとつだけ(これも知らなくてもいいのだが・・・)、株式売買に使われる「HFT」(高頻度取引)は、作品のキーにもなっているので知っておいてもいいかもしれない。

「HFT」とは「超高速取引」ともいわれる電子制御による株式売買のシステムで、コンピューターのアルゴリズムが相場の様子を判断し、自動で、しかもミリ秒単位で株取引を行う仕組みのことだ。

アメリカではすでに取引所の取引の半分以上をこのHFTが占めており、日本でも東京証券取引所で導入されており、世界中でHFTを使用した取引は盛んになっている。

くれぐれも資産運用は自己責任で・・・

作品タイトルにもなっている『マネーモンスター』、作品内の架空の金融財テク番組のタイトルでもあるが、過剰にショーアップされた内容に「アメリカ人的な大げさな番組だなあ」と感じるかもしれない。

しかしこの「マネーモンスター」に似た番組は実際にある。

CNBCというアメリカのニュース専門チャンネルの一番組で、「Mad Money」という。

「マネーモンスター」はこの番組をモデルにしたのではないかと言われているが、監督のジョディ・フォスターは否定しているとのこと。

株式投資をはじめ、今回の『マネーモンスター』の題材になった金融業界、株に限らず、先物、石油、FX・・・。

さまざまに「お金」をゲームのように扱う世界がある。

作品ではお金に翻弄された人々が扱われているが、監督ジョディ・フォスターから拝金主義への警告とも受け取れる面もある。

素人が手を出してタダですむような業界ではないのである。

とんでもない資金や勉強が必要であり、運も大きく絡んでくる。

作品内でカイルは番組に殴り込みをかけたが、くれぐれも資産運用は自己責任でお願いしたい。

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