映画評『サムライ』アラン・ドロン主演、ジャン・ピエール・メルヴィル監督が独特の映像美で放つ渾身のハードボイルド!

映画 映画評
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『サムライ』
1967年フランス
原題:Le Samourai
監督:ジャン・ピエール・メルヴィル
脚本:ジャン・ピエール・メルヴィル
原作:アゴアン・マクレオ
音楽:フランソワ・ド・ルーベ
出演:アラン・ドロン
   フランソワ・ペリエ
   ナタリー・ドロン
   カティ・ロシェ
   ミシェル・ボワロン
   ジャック・ルロワ

『サムライ』イントロダクション

かごの中で小鳥が鳴く。

薄暗い部屋に一人、静かにベッドの上で煙草をくゆらせる男、ジェフ・コステロ(アラン・ドロン)がいた。

コステロは無言でレインコートを着込み、帽子をかぶると、鏡に向かって丁寧に帽子のつばを整える。

部屋を出て、夜の街を歩き、手ごろな自動車を見つけると、おもむろに乗り込み、胸元から鍵束を取り出す。

ひとつひとつ丁寧に自動車のイグニッションキーに合う鍵を確認していく。

やがて合致する鍵が見つかり、自動車のエンジンがかかる。

その自動車に乗り、今度はとあるガレージに車を入れると、ガレージの主は何も言わず車のナンバープレートを好感し始めた。

ナンバープレートを交換し終ったガレージの主は、やはり何も言わずコステロに偽の身分証と一丁のリボルバー式拳銃を渡し、コステロは札束をガレージの主に渡した。

二人のあいだに一切の言葉は交わされない。

コステロは再び車に乗り込み、街のなかへと繰り出し、夜のホテルに入っていく。

ホテルの地下では、ナイトクラブが開かれており、ジャズの演奏が聞こえてくる。

コステロは目立たぬようにクラブのなかをすり抜け、奥の廊下に忍び込むと、支配人の部屋に押し入った。

問答無用でコステロの銃が火を噴く。

暗殺は成功した。

コステロは早々に部屋を抜け出すが、ピアノ弾きのヴァレリー(カティ・ロシェ)に顔を見られてしまう・・・。

アラン・ドロン主演、ジャン・ピエール・メルヴィル監督が独特の映像美で放つ渾身のハードボイルド!『サムライ』

アラン・ドロンが、侍のように厳格で孤独な殺し屋を演じた、彼の代表作の一つ。

事前にアリバイ工作をし、依頼されたナイトクラブの支配人を射殺した殺し屋のジェフ・コステロ。

しかしピアニストのヴァレリーに顔を見られてしまい、事態は思わぬ方向へと向かうことになる。

フレンチ・ノワールの巨匠ジャン・ピエール・メルヴィル監督が、セリフを極端に抑えたクールな演出と名撮影監督アンリ・ドカエとともに作り上げた映像美で、世界中の映画作家に影響を与えた傑作。

オープニングで「武士道」からの引用がテロップで流れ、ひりつくような緊張感の薄闇の中で映画は開始される。

スーツにコート、帽子をびしっと決めたアラン・ドロンがまるでモデルのように無駄な動きもなく振舞い、殺し屋のストイックさを演じてみせる。

おやっと気を引くのが、劇中アラン・ドロンが腕時計で時間を確認するときだ。

アラン・ドロンは右手に、そして内側に向けて腕時計をしている。

映画公開当時、これを真似するファンが多かったとか。

この独特の腕時計の付け方の理由は、監督のジャン・ピエール・メルヴィルの指示によるもの。

こういった腕時計の付け方は、かつて軍隊で、ガラスに光が反射して居所がばれないように、また、外側に向けているとガラス面に傷がつきやすいのでそれを防ぐため、という理由から採用されていた。

つまり主人公のコステロは、かつて軍隊に所属していた経歴を持つという設定があるのだろう。

そういった隠された設定の積み上げが、極端にセリフが少ない映画にリアリティや重みを与えている。

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