『L.A.コンフィデンシャル』
1997年アメリカ
監督:カーティス・ハンソン
原作:ジェイムズ・エルロイ
脚本:カーティス・ハンソン
ブライアン・ヘルゲランド
主演:ラッセル・クロウ
ガイ・ピアース
ケヴィン・スペイシー
『L.A.コンフィデンシャル』イントロダクション
バド・ホワイト(ラッセル・クロウ)。
眼前で母親が父親に殴り殺された過去を持ち、女性に暴力をふるう男を見ると異常に怒る直情径行の正義の男。
ジャック・ヴィンセンス(ケヴィン・スペイシー)。
テレビ番組「名誉のバッヂ」でテクニカル・アドバイザーを務めているが、ゴシップ記者のシドに情報を流しては裏金をせしめる、実は
悪徳警官。
エド・エクスリー(ガイ・ピアース)。
幼いころ亡くした優秀な刑事だった父親にあこがれ警官となり、強い正義感を持つがゆえに、たるみきった同僚を内部告発することもいとわない上昇志向の強い新米警官。
1950年代のロサンゼルスでは、マフィアの大物ミッキー・コーエンの逮捕をきっかけに、後釜を狙った血みどろの抗争が繰り広げられ、ロス市警もその渦中にあった。
ある夜、一件のカフェで元刑事を含む客6人全員が殺される「ナイトアウルの虐殺」事件が起きる。
その元刑事はバドのもと相棒だった。
メキシコ人を拘留し過剰に暴行した「血のクリスマス事件」で担当を外されていたバドは独自に調査を始める。
いっぽう「ナイトアウルの虐殺」捜査に当たるジャックとエドだが、容疑者として3人の黒人を逮捕、事件は解決したかと思われた。
だが事件の捜査中に、売春組織との関係や街の有力者ピアス(デヴィッド・ストラザーン)の影、地方検事エリス・ロウ(ロン・リフキン)の不可解な証言が絡んで、やがてそれは大きな闇・・・ロス市警の根深い腐敗を浮かび上がらせる。
バド、エド、ジャックの三人はそれぞれの正義のために、苦闘を強いられていく・・・。
本当に最後の最後まで息の抜けないクライム・サスペンスの傑作!
いろんな映画でネタにされるのがロス市警の腐敗ぶり。
たぶんこの『L.A.コンフィデンシャル』の原作ジェイムズ・エルロイが赤裸々に描いた警察内部の様子があまりに露骨でそれがショッキングだったからなんだろうけど、笑うほどひどい。
警官たちはクリスマスだからと言って署内に酒を持ち込んで勤務時間内にパーティーやってるし、新聞にそれをすっぱ抜かれた警察上層部は部下数人をスケープゴートにして警察のメンツをなんとか保とうとする。
物語の冒頭、試験に抜群の成績を収めて、刑事として昇進したいエドに、上司のダドリー(ジェームズ・クロムウェル)が尋ねるセリフはこうだ。
「起訴をものにするために証拠をねつ造できるか」
「自白させるために容疑者を殴れるか」
「更生の見込みなしの容疑者を打ち殺せるか」
全ての問いに「ノー」と答えるエドに、ダドリーは
「それなら刑事は無理だ」
つまりタフな現場だぞ、と言いつつ、超法規的なこともやる必要があるし、日常茶飯事というわけだ。
華麗な昼の顔とドロドロの夜の顔を持つ、ロサンゼルス。
その天使の街を取り締まる警察が内部腐敗を起こしており、警官個人個人の正義がいともたやすく握りつぶされてしまう中、主人公たちはどうやって立ち向かっていくのか。
エドやバドたちは、味方であるはずの警察組織から追い詰められていくのである。
複雑な構成の原作を見事に映像化
原作の『L.A.コンフィデンシャル』はもっと複雑に構成が入り組んでおり、とても2時間の映画にするには尺が足りないだろうとおもわれた。
それを監督カーティス・ハンソンとともに脚本を務めたブライアン・ヘルゲランドが見事に脚色。
原作の面白さを損なうことなく、映像作品として昇華している。
ブライアン・ヘルゲランドといえば自らも監督を務めたメル・ギブソン主演の『ペイバック』(1999年)(リチャード・スターク原作『悪党パーカー/人狩り』)、クリント・イーストウッド監督・主演の『ブラッド・ワーク』(2002年)(マイクル・コナリー原作『わが心臓の痛み』)、同じくクリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』(2003)(デニス・ルヘイン原作の同名小説)と、原作付きの映画を得意としている。
またラッセル・クロウやガイ・ピアースはこの作品がハリウッド出世作。
大変見ごたえのある作品で、その年のアカデミー賞でも作品賞最有力候補と目されていたが、なんと同年公開の『タイタニック』にさらわれてしまう、なんとももったいない作品。(だが脚色賞は受賞。ヘルゲランドは報われた)
身内に潜む悪を倒すために戦う正義漢たちのそれぞれの葛藤と結末まで、目が離せない傑作なのである。
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