映画評『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

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 先日正月の人だかりの中、映画館に観てまいりました。

 原作も読んでおり、前作映画も視聴済み、ブルーレイも購入しているファンです。

 第二次世界大戦期の広島は呉で、のんびりした性格の主人公、すずさんが暮らす日々を丁寧に描いた作品。
 前作は評判が口コミで広がり、公開劇場もだんだんと数を増やし、公開開始から一年を超えるロングランヒットとなったのが前作の映画『この世界の片隅に』。

 そして今回の『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、前作では尺の関係上、泣く泣くカットされた原作エピソードを盛り込む、ファンにとっては待ってましたの〝完全版″ともいえる内容。

 とはいえ、新作シーンは実に自然に織り込まれ、30分長くなったとは感じさせない、すべて必然の脚本と演出。
 このため、前作ではどうしても描き切れなかった各キャラクターが紡ぐ心の機微をより深く感じ取れ、思い入れを深めます。
 すずさんの物語は、幾重にも折り重ねられた人々の思いの物語でもあったのだと、感じることができるでしょう。
 これらの新作シーンによって、前作とはまた少し印象の違う映画になったともいえると思います。

 私、冒頭のコトリンゴさん歌う「悲しくてやりきれない」でもうすでに涙腺が弛んでしまうのですが、サウンドトラックも新しく収録されたんじゃないでしょうか。初めて聞く曲があったように思います。

 第二次大戦を舞台にした作品ではありますが、既存の「戦争反対」を声高に標榜主張するような戦争映画とは違います。その時代に生きた人々を、徹底的にリサーチしたうえでリアルに描き、明るいも暗いもあったんだよ、笑顔も涙もあったんだよ、今の我々と同じように生きていたんだよ、ということを表現できたことが、『この世界の片隅に』の素晴らしいアプローチ、作品手法の発見だったのではないでしょうか。

監督・脚本:片渕須直
音楽 : コトリンゴ
原作 : こうの史代
主演 : のん

公式ホームページ: https://ikutsumono-katasumini.jp/

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