『キング・コング』
2005年アメリカ・ニュージーランド
監督:ピーター・ジャクソン
1933年の同名作のリメイク。
もともとピーター・ジャクソンがこの1933年版のキングコングを見て映画の仕事をめざしたというくらい、オリジナルへの愛とリスペクトに満ちている。その愛が強すぎたのか、元の映画が100分ほどの尺であるのに対し、ピーター・ジャクソンの『キング・コング』は3時間10分と超長め。
みんなが見たかったのは約1時間ほど過ぎてから。長いプロローグである。我慢して付き合ってほしい。
約2億ドルというものすごい予算をかけただけあって、髑髏島での視覚効果は迫力抜群、コングと古代恐竜たちの格闘シーンも手に汗握る。アカデミー賞でも視覚効果賞、音響編集賞、録音賞の3部門を受賞している。
奇妙で巨大な蟲に、それも大量に襲われ次々に人間たちが死んでいくシーンなどのグロテクスさはさすがピーター・ジャクソン。見ているこっちが怖気が寄る。ピーター・ジャクソンといえば『ロード・オブ・ザ・リング』三部作でアカデミー総ナメにして「きれいなジャクソン」のイメージがあるかもだが、映画デビューは『バッドテイスト』というスプラッター・ホラー。ドロドロのグチョグチョも得意分野なのだ。
今回のコングの特徴はと言われれば、その男前っぷり。
ヒロインであるアン(ナオミ・ワッツ)のピンチには必ず駆けつける。男前。
全身傷だらけの巨体で肉食竜を相手に暴れまわる。男前。
そしてニューヨークに連れ去られたコング。
戒めを引きちぎってアンとの再開。
そこでロマンスのシーン。
ロマンスですよ。これが成り立つところが素晴らしい。人間女性と巨大ゴリラの心の交流が描けるなんて!
ここまで物語を積み上げてきた脚本と演出が報われるところでもある。
こわもてに知性をたたえるやさしい瞳というコングの造詣も生きる。
エンパイアステートビルのてっぺんで雄たけびを上げる孤高のコング。男前。
欧米人てけっこうゴリラ好きよね?
全世界の興行成績は約5億4700万ドルと、ややヒットくらいで終わっている。日本ではウケなかった。
今作で描かれた髑髏島の生態系は、恐竜いるし正体不明の進化生物いるしで滅茶苦茶といえば滅茶苦茶なんだけれど、これを精巧なCGでみっちり描いたことが、のちに『キングコング 髑髏島の巨神』(2017年)につながったんじゃないだろうか。
総じて絵はきれいだし、アクションシーンも迫力あるし、人間ドラマもしっかり描けた良い脚本だが、いかんせん大きな弱点は、最初にも述べた冒頭1時間、ずっと人間ドラマが続いてしまうこと。タイトルから怪獣映画を想像してしまうと、そこは退屈なスリーピングタイムになってしまう。ただ及第点は取ってるのが、この映画をB級にできない理由。
1933年にはじまり、これまで何本もスクリーンに登場したキングコング。
昔から日本産の怪獣ゴジラとの縁も深い。
今年2020年にはハリウッドで『ゴジラVSコング』が公開予定。
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