『新聞記者』
2019年スターサンズ・イオンエンターテイメント
監督:藤井道人
脚本:詩森ろば
高石明彦
藤井道人
原案:望月衣塑子『新聞記者』
河村光庸
音楽:岩代太郎
出演:シム・ウンギョン
松坂桃李
本田翼
岡山天音
郭智博
長田成哉
宮野陽名
高橋努
西田尚美
高橋和也
北村有起哉
田中哲司
『新聞記者』イントロダクション
2月20日、深夜の東都新聞社会部。
誰もいない、静まり返ったオフィスに、匿名のファックスが流れてくる。
ほぼ同刻、新聞記者の吉岡エリカ(シム・ウンギョン)は自宅で討論番組を見ながら情報収集していた。
吉岡は日本人の父と韓国人の母親のもと、アメリカで育った。
アメリカで記者になることもできたが、日本の東都新聞社で記者をしている。
おなじころ、内閣情報調査室。
杉原拓海(松坂桃李)は、元外務省だったが、現在は内閣情報調査室、通称「内調」で働くエリート官僚だ。
杉原も内調の自分のデスクで、吉岡と同じ討論番組を見ている。
同刻、銀座。
官僚の白岩聡が野党の女性議員と会うのを、弘安の三吉宗悟が車の中からカメラで撮影する。
三吉は杉原に電話をかけ、白岩の密会を伝えた。
翌朝。
出社した吉岡は、新聞各社の今朝の朝刊をチェックするが、どの新聞社も横並びで同じような内容を報じている。
そんななか、元文科省大学教育局長の白岩が野党女性議員と密会との記事が報じられている。
他方、後藤さゆりという女性ジャーナリストが、野党の辻川議員に性的暴力を受けたという事件が世間で取りざたされていた。
マスコミ界隈では、それを「後藤さゆりのハニートラップだ」とする見方もあった。
吉岡はこの後藤さゆりの事件を取材し、記事を作成するが、小さなベタ記事扱いにされる。
こんな東都新聞社会部で、深夜に送信された匿名ファックスが話題に上る。
「新設大学院大学 設置計画書」というタイトルのその資料には、冒頭のページに、黒いサングラスをかけたヒツジのキャラクターが描かれていた・・・。
国家権力の闇に迫ろうとする新聞記者と、情報コントロールを任されたエリート官僚を中心に報道メディアは権力とどう対峙するのかを問いかける衝撃作『新聞記者』
東京新聞社所属の望月衣塑子の同名著作を原案にした社会派サスペンス。
フィクションとして描かれているが、劇中の政権の暗部や報道メディアは非常にリアル。
国家権力の闇に迫ろうとする主人公ほか一握りの報道マンたちと、現政権に不都合なニュース情報のコントロールを任されたエリート官僚を中心に、報道メディアはどう対峙するのかを問いかける衝撃作。
国民のためにという詭弁に飲み込まれつつ、真に国民のためを思うと自分のしていることに疑問を抱かざるを得ないエリート官僚役の松坂桃李の苦悩感あふれる演技は見事だ。
体制を守るため、卑劣ともいえる手段をとる政権側官僚システムとその犠牲者たち、それぞれの登場人物が、目に見えぬ黒い綱にからめとられてどうしようもなくなっている様子も描かれており、単に正義感に燃える新聞記者が悪を暴く、というような簡単な構図ではない。
第43回日本アカデミー賞では最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞、優秀監督賞、優秀脚本賞、優秀編集賞と6冠を獲得しているほか、その年のさまざまな映画の賞を獲得している。
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