『JFK』
1991年アメリカ
監督:オリバー・ストーン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ケビン・コスナー
トミー・リー・ジョーンズ
ゲイリー・オールドマン
ケヴィン・ベーコン
マーティン・シーン(ナレーション)
『JFK』イントロダクション
1963年11月22日金曜日。
その日は全米で悪夢の日として記憶されることになる。
現地時間12時30分、テキサス州ダラス市内を訪問パレード中の第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディが狙撃され、死亡したのである。
1時間後に犯人として逮捕された男はリー・ハーヴェイ・オズワルド(ゲイリー・オールドマン)。
ニューオーリンズの地方検事であるジム・ギャリソン(ケビン・ベーコン)はこの報道に強い違和感を覚える。
オズワルドはニューオーリンズの法曹界では不可思議な経歴、奇行で有名人だったからだ。
ジムはすぐにオズワルドの調査を始める。
そのオズワルドも大統領暗殺の容疑を否認していたが、二日後にはダラス署内でジャック・ルビー(ブライアン・ドイル=マーレイ)という実業家に射殺され、法廷に立つことはかなわなかった。
翌年、大統領暗殺事件の検証のために組織されたウォーレン委員会の公式調査報告では、事件をオズワルドの単独犯行と結論づける。
JFK暗殺から3年後。
ジムはウォーレン委員会の報告書を何度も読破するが、調べれば調べるほど事件の矛盾点や疑問点があらわになってくる。
どう考えても違和感しかないライフルの弾丸の軌道、現場周辺の状況証拠や食い違う目撃者の証言。
あっけなく捕まるオズワルドやその彼が間をあけず殺されてしまったこと。
さらには、現職の大統領が衆人環視の中暗殺されるという大事件にもかかわらず、犯人の動機も背後関係もわからないまま多くの謎を残しつつ、すぐに捜査が終了してしまったこと。
ジム・ギャリソンは、仕事も名誉も捨て去る覚悟で、事件の真相を追うことを決意するが、それは合衆国の巨大な闇への挑戦でもあった・・・。
現在でも様々な謎に包まれ、いまだ解明されぬ『JFK』事件
この映画は、20世紀最大の陰謀論のひとつ、JFK暗殺事件を題材に、オリヴァー・ストーン監督がジム・ギャリソン(実在の元検事)、ジム・マース(JFK暗殺事件研究家)の著作を原案に、虚実ないまぜにしたフィクション映画、現代史ミステリーである。
映画では、リー・ハーヴェイ・オズワルド、CIA、マフィアや大物政治家がケネディ暗殺の犯人あるいは黒幕らしいとして語られるが、この説は以上の通り、独自の説に基づいて展開されている。
そしてこの独自の説の材料は、映画が製作される10年も前に発表されていたものの、この映画のヒットにより一躍知名度を高めた。
原案のひとりのジム・ギャリソンは、劇中にある通り、1967年、ケネディ暗殺を企てた犯人として、ニューオーリンズの実業家クレイ・ショーを逮捕・起訴した。
1969年1月にクレイ・ショーは裁判にかけられるが、陪審員裁判の結果、無罪となる。
これは今日まで、ケネディ大統領暗殺のために提起された唯一の裁判でもある。
映画はJFK暗殺事件の状況を丹念に描きながらも、当時の情勢、つまり東西冷戦やキューバ危機、ベトナム戦争やマフィアの問題、暗躍する軍需産業など、当時の(そしていくつかはいまの)アメリカが抱える問題をも浮かび上がらせる。
それだけジョン・F・ケネディという人物が大統領になった時期が難しい時代だったこと、そこに輝かしく若い大統領の出現に多くのアメリカ国民が希望を見出していたことがわかる。
そしてその死。
落胆も大きい。
だがその死を画策したものたちがいる。
この映画は、陰謀論という形でJFKの死に理由をつけるものであると同時に、アメリカの暗部に探りを入れた作品でもある。
映画で出てきた説がすべてではない。
劇中、ジム・ギャリソンが法廷で明らかにした謎がすべてではない。
あえて映画では描かれなかった証拠もあるし、ギャリソンの説への反証もある。
あくまでフィクションであるということを忘れずに見てほしい。
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