『日本沈没』
1973年東宝
監督:森谷司郎
特技監督:中野昭慶
脚本:橋本忍
原作:小松左京
音楽:佐藤勝
出演:藤岡弘
いしだあゆみ
小林桂樹
丹波哲郎
『日本沈没』イントロダクション
二億年前の地球では、まだ大陸はパンゲアと呼ばれるただ一つの広大な大地だった。
それが一億五千年前、一億年前、六千五百万年前と、プレート・テクトニクスによりいくつもの大陸に分かれていった。
日本列島は三千万年前にはまだなく、ユーラシア大陸の東の果てから分かれ始めたのがおよそ一千万年前、ようやく今の形の日本列島の姿を見せ始めたのが三百万年前である。
そして現在・・・。
197X年、日本は高度経済成長期を迎え、日本人は繁栄と繁忙の中で日々を過ごしていた。
そんなある夜、小笠原諸島北部の無名の小島が、一夜にして海底に没した。
地球物理学者の田所雄介博士(小林桂樹)が調査のために現地調査に赴いた。
調査のための深海調査艇「わだつみ」の操縦者はたくましい青年・小野寺俊夫(藤岡弘)。
日本海溝に潜った「わだつみ」は、深度1800mの海底を走る奇妙な亀裂を発見し、謎の乱泥流に船体をもまれる。
そのころ、日本の首相山本甚造(丹波哲郎)は気になることがあった。
山本は、気象庁の官長や運輸大臣から聞いた、日本海の異変がちょっと気になっていた。
それから。
小野寺は上司の吉村(神山繁)に一人の女性を紹介されていた。
阿部玲子(いしだあゆみ)というどこかミステリアスな雰囲気をもつ女性に、小野寺は惹かれる。
玲子も、深海の話をする小野寺に興味を持つ。
泳ぎに出た二人は結ばれる。
その時、地鳴りがし、爆発音が響いた。
それは伊豆半島天城山の大噴火だった。
さっそく内閣では地震学者との懇談会を開く。
その席に招かれた田所は、日本が沈没し、なくなってしまうと口にするが、学者仲間からも失笑を買う。
しかし、政財界の黒幕である渡老人(島田正吾)はこの意見に興味を持つ。
渡は田所の説を検証するため山本総理を呼び出し、極秘裏に「D計画」を立ち上げさせる・・・。
小松左京の大ベストセラーSFを見事に映像化したパニック超大作『日本沈没』
1970年代に発表され、異例のベストセラーとなった小松左京のSF小説を、森谷司郎監督の骨太の演出と、中野昭慶の特殊撮影を駆使した映像で大ヒットしたパニック超大作。
深海潜水艇「わだつみ」号の操縦者・小野寺は、海底火山の権威・田所博士らを乗せた無人島の調査で、異変を探知する。
そして近いうちに日本列島が沈没するという田所の主張を裏付けるように、火山噴火や大地震が発生。
日本全体がパニック状態に陥っていく。
藤岡弘、いしだあゆみといった当時の若手のホープに加え、丹波哲郎、小林桂樹など豪華キャストも評判になった。
特撮ファンにとっては、特技監督の中野昭慶はゴジラシリーズでおなじみ。
崩れゆく日本列島の美しいとまで言えるその特撮シーンをはじめ、流れゆくマグマ、炎にのまれる都市などは見どころだ。
もともと『日本沈没』は、日本人のアイデンティティを問う作品であった。
日本人が国を失い放浪の民族になったらどうなるのか。
それをシミュレートするための物語の導入部なのだ。
原作者・小松左京はその前段としての地球物理学を緻密に、そしてダイナミックに導入し、その作中での解説やアイデアは修士論文に相当するとの声もあったという。
難民となって世界中に散り散りになった日本人を描く第2部の構想(タイトルは仮に『日本漂流』とされた)はあったため、日本沈没のラストには「第1部・完」と記されている。
第2部の執筆は長く待たれたが、小松左京は自身でそれを書くことはなく没した。
(2006年にSF作家の谷甲州により、共著という形で「日本沈没・第二部」は刊行された)
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