『ザ・シークレット・サービス』
1993年アメリカ
原題:In the Line of Fire
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
脚本:ジェフ・マグワイヤー
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:クリント・イーストウッド
ジョン・マルコヴィッチ
レネ・ルッソ
『ザ・シークレット・サービス』イントロダクション
ベテランですでに老齢と言ってもよいシークレット・サービスのフランク・ホリガン(クリント・イーストウッド)は、相棒のアル(ディラン・マクダーモット)と組んで潜入捜査で麻薬売買の秘密グループを摘発し、まだ現役然としていた。
だが彼には、かつてケネディ大統領の暗殺を防げなかったという後悔が、まだ心にしこりとして残っていた。
おりしもアメリカでは大統領が再選キャンペーンがはじまっていた。
ホリガンはアルが「どこかの変人を調べろ」と言いつかっていた役を代わりに買って出る。
その男の名はJ・マクローリーと言った。
マクローリーの部屋を大家に頼んで見せてもらったホリガンは、その部屋の壁一面に、歴代の大統領暗殺の雑誌や新聞記事が貼り詰められていることに驚き、翌日今度はアルと令状をとって捜索する。
だが、部屋は一掃されていた。
ただ一枚、ケネディ大統領暗殺時の写真記事が壁に残されており、そしてそこに写るホリガンの顔には丸印でマーキングされていた。
ホリガンは、この男が本気で大統領暗殺を計画していると直感し、アルに調査を進めるよう指示する。
翌日の夜、帰宅したホリガンは謎の電話を受け取る。
男はブースと名乗り、大統領の暗殺を宣言、ホリガンに挑戦する。
ホリガンは上司であり長年の理解者デヴィッドに頼み込み、大統領の警護チームに自分を入れてくれるように口添えを頼む。
警護チームの責任者ワッツ(ゲイリー・コール)は、高齢でそりの合わないホリガンを毛嫌いしており、この編入には反対したが、しぶしぶ認める。
高齢の体にムチ打ちながら精力的に警護に努めるホリガンを、ブースは離れたところからじっと静かに観察していた・・・。
心に傷を負った護衛官と、大統領の暗殺をたくらむ犯人との対決をスリリングに描くサスペンス大作!『ザ・シークレット・サービス』
かつてケネディ大統領の暗殺を阻止できず、心に傷を負ったシークレット・サービスにクリント・イーストウッド、大統領暗殺をたくらむ犯人にジョン・マルコヴィッチ、この二人の息詰まる対決を描くサスペンス・アクション。
撮影前、イーストウッドは敵役の男にジャック・ニコルソンを希望していたというが、なかなかどうして、名優ジョン・マルコヴィッチの怪演は、映画を観終わってみれば、この役はマルコヴィッチしかいない、と思わせる素晴らしいものになっている。
さまざまな変装を凝らして主人公のホリガンはじめ、シークレット・サービス、FBI、CIAをも翻弄するもとエージェントという設定のこの敵役には、同じくさまざまな映画で、それこそ幅広い役柄をこなしてきたジョン・マルコヴィッチをおいて他にない。
劇中、上記の通りさまざまな変装で身を変えるマルコヴィッチであるが、その眼力で視聴者にはマルコヴィッチだとわかるのもさすが。
イーストウッドのあの鋭いまなざしを正面切って受けて立つのであるから、それくらいの存在感の人物でなければ勤まらなかっただろう。
イーストウッド演じるホリガンという人物も、凝った設定である。
かつてケネディ大統領の暗殺に立ち会った警護官で、周りに煙たがられながらも頑固にシークレット・サービスの職を続けている。
スタントなしで犯人を追いかけて屋根の上を走り回るイーストウッドの姿は、(嫌われてはいないけど)長く現役を務めてきたイーストウッドにぴったりの役回り。
性格はやや丸くなったけど、『ダーティ・ハリー』のハリーが年を取ったら、こんなかもしれないなあとも思う。
アクションシーンを見ているこっちは老齢にハラハラしてるんだけども(笑)
イーストウッドは本当に自分の見せ方が自分でわかっている役者で、この『ザ・シークレット・サービス』と同年公開の『パーフェクト・ワールド』や1995年の『マディソン郡の橋』などでも、イーストウッドなのにちゃんとキャラの違う劇中の役をこなしているという、ベテランの技を見せてくれる。
とまあ、『ザ・シークレット・サービス』は、二人の名優の火花散る演技合戦も素晴らしいのだ。
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