『わが谷は緑なりき』
1941年アメリカ
原題:How Green Was My Valley
監督:ジョン・フォード
脚本:フィリップ・ダン
原作:リチャード。レウェリン
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:ロディ・マクドウォール
ドナルド・クリスプ
サラ・オールグッド
モーリン・オハラ
パトリック・ノウルズ
アンナ・リー
ジョン・ローダー
リチャード・フレイザー
ジェームス・モンクス
エヴァン・S・エヴァンス
アーヴィング・パイケル
ウォルター・ピジョン
バリー・フィッツジェラルド
リス・ウィリアムズ
フレデリック・ワーロック
モートン・ローリー
『わが谷は緑なりき』イントロダクション
初老を迎えたヒュー・モーガン(アーヴィング・パイケル)は生まれ故郷のロンダの谷を出ようとしていた。
ヒューは谷が緑だったころの、一家皆がそろって幸せだった少年時代を回想する・・・。
「谷は緑に満ちあふれ、ウェールズで一番美しかった。
少年時代、私は父からすべてを学んだが、その教えはいつも正しかった。
父の素朴な教えを今でもはっきりと覚えている。
当時、炭鉱から掘り出された石炭カスは、丘にボタ山を築いたが、田舎の村の美しさを壊すほどではなかった。
まだ緑の谷に黒い線が伸びる程度だった。
父と兄たちは石炭掘りに誇りを持っていた。
誰かが歌いだすと谷に皆の歌声が響いた。
歌は私たちの生活の一部だった。
父と兄たちは、仕事から帰ると裏庭で体を洗った。
バケツでお湯と水を運ぶのが姉の仕事。
私もできる範囲で父や兄たちに手を貸したものだった。
だが中には落ちない汚れもあった。
そんな名誉の証を持つ父や兄がうらやましかった。
食事時、父の前にはいつも牛か羊の肉があった。
食事は黙って食べた。
うまい料理に勝る話などない。
忙しい母は最後に食べ始め、最初に食べ終えた。
父が家の頭とすれば、母は家の心臓だった。
後片付けがすむと、ひとりひとりに小遣いが渡された。
銀行は無いので貯金は暖炉の上に置いた。
父は言った“金は使うためにある。稼ぐときと同じくらい必死に使え。楽しく、ただし目的を持て”と。
私は小遣いをもらうと、いつものように家を出て道を横切る。
でも、父の教え通り、教会の前では静かに。
それから店に行って、アメを買って何時間もなめた。
溶けたあとも舌の裏に甘味が残っている気がしたものだ。
今でも昔の味がよみがえってくる。
過ぎた日々を思い出させる懐かしい味だ。
私が初めてブロンと会った日・・・彼女は隣の谷から初めて両親を訪ねてきたのだ。
そして私は恋をした。
子供なのにと思うだろうが、その時の気持ちは私にしかわからない。
だがブロンは兄のイボールと結婚することが決まっていた。
ふたりの結婚式を行ったのはグリュフィド牧師。
カーディフの大学を出た新任牧師だった。
あるとき、炭鉱の最低賃金が下げられた。
これがきっかけで兄たちは組合を作ろうとするが、父と対立し、家を出てしまう。
このころから少しずつ、谷は、人々の心は、すすで汚れていくようだった・・・」
19世紀末、イギリスの炭鉱町に暮らす一家を巨匠ジョン・フォード監督が美しい映像と詩情豊かな演出で描く傑作ヒューマンドラマ『わが谷は緑なりき』
リチャード・レウェリンの書いたベストセラー小説を原作に、巨匠ジョン・フォード監督が美しい映像と詩情豊かな演出で描く傑作ヒューマンドラマ映画。
第14回アカデミー賞で最優秀作品賞、監督賞、助演男優賞、撮影賞、美術賞、室内装置賞を受賞した。
19世紀末のイギリス・ウェールズ地方のある炭鉱町を舞台に、男たちが皆働いているモーガン一家を主人公に、善意と誠実さを貫こうと生きる人間の姿と魂を描いた作品。
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