映画評『病院坂の首縊りの家』全体的にコミカルな金田一シリーズ第5作目

ポップコーン 映画評
スポンサードリンク

『病院坂の首縊りの家』
1979年東宝
原作:横溝正史
監督:市川崑
脚本:日高真也
   市川崑
音楽:田辺信一
出演:石坂浩二
   佐久間良子
   桜田淳子 
   草刈正雄

『病院坂の首縊りの家』イントロダクション

吉野氏在住のとある推理作家(横溝正史)のもとを、金田一耕助(石坂浩二)があいさつに訪ねてくる。

金田一はしばらく外国に旅に出るつもりだという。

パスポートの写真を撮るために、推理作家が薦める写真館へ金田一は向かう。

写真を撮り終えた金田一に、写真館の主人・本條徳兵衛(小沢栄太郎)が調査の依頼を持ち掛けてくる。

殺されそうになったというのだ。

他言無用と念を押され、金田一は写真館を出る。

その日、一人の美女(桜田淳子)が写真館を訪れ、「結婚写真を撮りたい、夜に迎えをよこすので来てほしい」と告げる。

その夜、ひげ面の男(あおい輝彦)が写真館に迎えに来る。

写真館の跡取り・直吉(清水紘治)が男についていくと、そこは「病院坂」と呼ばれる坂にある、一軒の空き家となった洋館だった。

「病院坂」はそもそも正式な名称があるのだが、地元の人がいつしかその名前を使わなくなり「病院坂」「病院坂」と呼ぶようになった坂だった。

案内された洋館が空き家でなかったことに疑問を抱きながらも、いや、その埃だらけでうらぶれた様子はどう見ても空き家だと思われるのだが、ひげの男にある部屋に導かれ、直吉は写真を撮ることになる。

新郎はひげの男で、新婦は昼間来たあの美女であった。

だが美女の様子がどこかおかしい。

ぼうっと気が抜けているようで、心ここにあらずといった風。

着物の襟が崩れているので直吉が近寄ろうとすると、ひげの男は激しく声を荒げて直吉を近寄せようとしない。

また、新郎新婦の頭上には奇妙な風鈴がぶら下がっていた。

ともかく写真を撮った直吉は、写真が出来上がった二日後、再び病院坂の洋館を訪れる。

するとそこで見たものは、なんと風鈴のように天井から吊り下げられたあのひげの男の生首だった・・・。

全体的にコミカルな作風・市川崑+石坂浩二の金田一シリーズ第5弾『病院坂の首縊りの家』

『犬上家の一族』に始まった市川崑監督、石坂浩二主演の金田一耕助シリーズの第5弾が『病院坂の首縊りの家』だ。

これまでの金田一シリーズ同様、猟奇的な殺人事件をあつかっているのだが、この『病院坂~』は、全体的に肩の力の抜けたような、コミカルさのある作風となっている。

物語冒頭とエンディングは、とある推理作家の家を、冒頭では金田一が、エンディングでは黙太郎(草刈正雄)が訪れ雑談を交わすシーンなのだが、その推理作家夫婦は、原作者の横溝正史とその奥さん、ご本人である。

よく見なくても明らかに素人演技なので、ピンと来る人も多いのではないか。

舞台も奈良の吉野にしているため、金田一や轟警部以外はほとんどが方言でしゃべっており、そのやわらかい響きがどこかしら事件の深刻さを和らげ、コミカルさに寄与している。

そんななかで熱演をみせているのが桜田淳子だ。

桜田淳子はこのときアイドル歌手として芸歴6年であったが、女優としても活躍を始めており、法眼由香利と山内小雪の二役を見事にこなした。

二枚目俳優で草刈正雄も今作では金田一の助手のようなポジションの役柄で三枚目を演じているのが楽しい。

この『病院坂~』は軸となる法眼家の家系がいつもの横溝作品にもまして複雑で、しかもトリックの一つとして法眼由香利と山内小雪というそっくりさんが出ること、さらにここに部外者かと思われる写真館の主人まで事件に絡む混沌ぶりで、映像化はさぞ難儀したと思われる。

それゆえか、原作からいくつもの改変を経て、映画はできるだけスムーズに話が進むようになっている。

映画をみて、原作を読もうと考える方はそのへんは事前に了承されておいたほうがよいだろう。

こちらの作品もどうぞ!
≫映画評『女王蜂』凝りに凝ったストーリーと豪華出演陣の市川崑+石坂浩二の金田一シリーズ第4弾

コメント

タイトルとURLをコピーしました