映画評『グッモーエビアン!』ロックでパンクなファミリーの泣けるストーリー

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『グッモーエビアン!』
2012年ショウゲート
原作:吉川トリコ
監督:山本透
主演:麻生久美子
   大泉洋
   三吉彩花

『グッモーエビアン!』イントロダクション

中学3年のハツキ(三好彩花)はしっかりものの女子中学生。

母親のアキ(麻生久美子)は元パンクロッカーのギタリストで行き当たりばったりのシングルマザー。

同居人で母親の彼氏のヤグ(大泉洋)は中卒プー太郎で超がつく自由人で世界を放浪中。

これはそんな3人家族の物語。

ハツキとアキは対照的な性格だが、まるで友達のように家族仲は良好。

ある日放浪中のヤグから一枚の絵ハガキが届く。

そこに書かれた「グッモーエビアン!」の文字。

何のことかわからないまま学校に行くハツキだが、産休の担任に代りにやってきた小川先生(小池栄子)が教壇で発した言葉「Good morning,everyone!」という挨拶を聞いて、このことか、と腑に落ちる。

2年後。

商店街で買い物の帰り道。

ハツキは行き倒れて人ごみに囲まれているヤグを見つける。

ふたたびハツキ、アキ、ヤグの3人の生活が始まった。

ヤグは血は繋がっていないがハツキのことが大好きで、ハツキもヤグのことが大好きな家族。

だが、思春期のハツキは、なぜかこの状況にいら立ってしまい・・・。

『グッモーエビアン!』普通じゃないけど家族。ラストにスカッと泣かせる絆の物語

超・自由人×元パンクロッカーの母×真面目な女子中学生、ということで、もっと破壊的なコメディー映画かな、と最初思っていたのですが、全然違いましたね。

中身は直球の家族ドラマでした。

映画冒頭にこうな文章がテロップで入ります。

 あなたが生まれたとき
 あなたは泣いて
 まわりはみんな笑っていたでしょう

 だから あなたが死ぬときは
 まわりが泣いて
 あなたが笑っているような
 
 そういう人生を歩みなさい

もうこれでハートウォーミング宣言じゃないですか。

すっと視点を切り替えましたね。

どこかで聞いたことのあるようなセンテンス。

何かの引用かもしれませんが、思い出せませんでした。

(調べたらネイティブアメリカンの言い伝えでした)

思春期のハツキが普通じゃない家族に悩み、将来像が描けず、大好きなのに進路相談にも来てくれない母親のアキに反発を覚えたり、自分のことも大好きアピールしてくれるヤグのことも好きなのに、その自由すぎる生き方に
いらだったり。

これ、いわゆる「普通の家族」だったとしても、思春期の子にはたいてい起きる衝動でしょう。

3人の生活を丁寧に描きながら、ハツキの思春期の爆発や後悔を三吉彩花が見事に演じます。

ハツキの友人トモミにブレイク直前の能年玲奈(現・のん)。

この時点ですでにきらりと光る個性にも注目。

いわゆるパンクロックの部分は少々微妙

アキもヤグもパンクバンドのメンバーということで、作中何かあると「ロックだ」「パンクだ」というのですが、その自由な生き方はどちらかというとフラワームーブメントのピッピースタイル。

「ロック」って何だ。

劇中バンドの楽曲と演奏はカッコいいんですけどねえ・・・。

とか言いつつ、予想以上にヤグ役の大泉洋のバンド・パフォーマンスが素晴らしかった。

明らかにブルーハーツのヒロトのコピーなんですけど、大泉洋のポテンシャルの高さを見せつけられた。

ギターの麻生久美子は、がんばったが、はじけ方が足りない、間違えないように弾くのでいっぱいいっぱいだったように見える。

普通だろうが、普通でなかろうが、家族の幸せは愛にある

この映画は、ヤグとアキのキャラクターに振り回されるのを楽しみつつ、ハツキの心の成長を見守る作品です。

思春期ならではの症状で、愛が見えなくなったハツキが、再び家族の愛に気付く、そんな物語です。

ふだんはこっ恥ずかしい話しも、これなら楽しみながら観られる。

そしてひょっとしたら、微笑みながらさわやかに、涙の一粒が流せるかもしれません。

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