『風と共に去りぬ』
1939年アメリカ
監督:ヴィクター・フレミング
主演:ビビアン・リー
クラーク・ゲーブル
原作:マーガレット・ミッチェル
久しぶりにこの作品を観た。
最初に見たのが小学生の頃とかで、登場人物の恋だの愛だのがわからなかったからだが、これまではそんなに面白いとは思ってなかった。
しかし今回、腰を据えてしっかり観てみると、こんなに面白い映画だったかと気づかされた。
名作として生き延びているのもさもありなん、である。
舞台はアメリカ、南北戦争を背景に、時代の大波に揉まれながらも生命力豊かに生き抜く主人子スカーレット・オハラ(ビビアン・リー)の一代記。
周囲の男性のあこがれの的スカーレットが本当に好きなのはアシュレー(レスリー・ハワード)。
だがそのアシュレーはスカーレットを振ってメラニー(オリヴィア・デ・ハビランド)と結婚する。
そこに現れるチョイワルおやじのレット・バトラー(クラーク・ゲーブル)は、影となり日向となりスカーレットを助け、時には叱咤し、いつしかスカーレットもバトラーに惹かれるようになる……。
三角関係がいくつも絡みあう複雑な恋模様を中心に、南北戦争の勃発からその銃後の激しい混乱、生き延びたスカーレットたちが再び故郷タラの大地に戻るまでが前半の二時間、インターミッションをはさんで、戦後の混乱した南部アメリカ、価値観がガラガラと変わり続ける中でしたたかさを身につけながら、ようやくスカーレットはバトラーと結ばれ、そして別れに至る後半が二時間。
長尺ではあるが、作りこまれた巨大な舞台美術、数百人規模(ひょっとしたら千人規模?)のエキストラの迫力、そして遠近を巧みに使い分けるカメラワークで観ていて物語に引き込まれる。
とくに夕焼けのタラの大地に立つスカーレットのシルエットのカットなどは、そのテーマ曲(『タラのテーマ』)の効果も相まって屈指の印象である。

他にも戦火のアトランタで人々が逃げ惑う中、炎で燃え落ちる建築物の迫力のカットなど……赤と黒の対比が美しい。
映画が製作された1939年といえば、まだ第二次世界大戦の勃発前である。
アジアでは極東の小国がノモンハン事件を起こし、ヨーロッパではナチスのポーランド侵攻……きな臭い時期です。
そんな時局にこんな大作(三年の制作年月と当時としては破格も破格の予算390万ドルをかけた)を作ることができたのは、アメリカの繁栄の明かし。こんな国と戦争して勝てるわけがない。
アカデミー賞でもあらゆる部門を総ナメ。
作品賞受賞、監督賞授賞(ヴィクター・フレミング)、主演女優賞授賞(ヴィヴィアン・リー)、助演女優賞授賞(ハティ・マクダニエル)、脚色賞受賞(シドニー・ハワード)、美術賞授賞(ライル・ホイーラー)、編集賞授賞(ハル・カーン、ジェームズ・ニューカム)、色彩撮影賞授賞(アーネスト・ホーラー、レイ・レナハン)などなど。
ノミネートでも主演男優賞(クラーク・ゲーブル)、作曲賞(マックス・スタイナー)特殊効果賞、録音賞など。
『風と共に去りぬ』のテーマは「生きる力」だと思うのですが、それが作品を見たアメリカ人の精神にビビッと来たのは間違いない。
スカーレットの奔放かつエネルギッシュ、時には考えなしに衝動で突き動く行動力、レット・バトラーのしたたかさとスカーレットへの強い愛、性格的に弱々しいアシュレーの人間臭さ、最後まで変わることのないメラニーの慈愛。
そういった登場人物たちがしっかりと生きてフィルムになっている。
もはや映画界では古典の部類にはいる『風と共に去りぬ』だが、どこかで時間の余裕を作って観てもらいたい。(なんせ4時間あるからね・汗)
私のように昔見たけどピンと来なかった人にも、時間がたつとわかる良さがあると思うので再チャレンジはどうだろうか。
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