映画評『フューリー』戦車ファン必見のリアル戦争ドラマ

シャーマン戦車 映画評
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『フューリー』
2014年アメリカ
原題:Fury
監督・脚本:デヴィッド・エアー
音楽:スティーヴン・プライス
出演:ブラッド・ピット
   シャイア・ラブーフ
   ローガン・ラーマン
   マイケル・ペーニャ
   ジョン・バーンサン
   ジェイソン・アイザックス
   スコット・イーストウッド

『フューリー』イントロダクション

第二次世界大戦中、アメリカ軍の戦車は、武装、装甲ともにナチス・ドイツ軍よりも劣っていた。

アメリカ軍の戦車乗員は強大な敵戦車に撃破され、苦戦していた。

1945年4月。

連合軍はナチス・ドイツ心臓部に進攻したが、激しい抵抗にあっていた。

ヒトラーは“総力戦”を宣言し、全国民を、男女、子供を問わず兵として動員した。

第2機甲師団第66機甲連隊に所属するドン・コリア―、通称「ウォーダディ」(ブラッド・ピット)が車長を務めるシャーマン戦車「フューリー号」には、砲手のボイド・「バイブル」・スワン(シャイア・ラブーフ)、装填手のグレイディ・「クーンアス」・トラヴィス(ジョン・バーンサル)、操縦手のトリニ・「ゴルド」・ガルシア(マイケル・ペーニャ)が乗り組んでいたが、先の戦闘で副操縦手を亡くしている。

彼らは北アフリカ戦線からの歴戦の猛者だった。

そこに補充兵としてノーマン・エリソン(ローガン・ラーマン)が配属される。

ノーマンは新兵のタイピストで、戦車の中を見たこともなく、ましてや戦闘に参加した経験もなかった。

戦車小隊での行軍中、ノーマンは敵の陰に気付きつつも報告せず、そのせいで先頭を走る味方の戦車一両がヒトラーユーゲントの少年兵の攻撃によって破壊されてしまう。

戦車は乗員もろとも火だるまとなる。

さらにノーマンは、ドイツ軍対戦車砲陣地との戦闘の際にも、戦いに躊躇する。

何度も味方を危機に陥れてしまうノーマンにドンは怒り、戦争の現実を「教育」するため、ノーマンに捕虜のドイツ兵を射殺するよう強要する。

嫌がるノーマンだったが、ドンは力ずくで彼に銃を持たせ、捕虜を射殺させる・・・。

戦車ファン必見のリアル戦争ドラマ『フューリー』

タイトルの『フューリー』は主人公たちが登場するアメリカの大戦中の主力戦車シャーマンにつけられた名前だ。

この映画は凄惨な戦争ドラマではあるが、戦車ファン必見のマニアックな作品でもある。

シャーマン戦車がどかどかと出てきて、しかも稼働しているのは言わずもがなだが、なんと戦車ファンには人気の高いドイツ軍のディーガーⅠ、しかも現存する実機では唯一稼働する車体が登場する。

これはイギリスのボービントン戦車博物館に所蔵されているのが貸し出された。

物語後半に、主人公たちの乗るフューリー号のまえに立ちはだかる強大な敵としてスクリーンに現れる。

ティーガーⅠとフューリー号の近接タイマン勝負も、戦車ファンとしては手に汗握る戦い。

フューリー号も劇中設定ではM4A3E8シャーマン(通称イージーエイト)という設定だが、撮影で使用されたのはM4A2E8という、実は対ドイツ戦では使用されたことのない車両。

イージーエイトはドイツ軍により撃破されたシャーマンのスクラップからはぎとった装甲を溶接し防御力を強化したり、履帯幅も広くなるなど多くはカスタム(?)化されており、朝鮮戦争にも使われたり、日本の陸上自衛隊にも供与されるなどした。

劇中では戦闘シーンでシャーマンの内部もよく描かれており、砲弾の装填や、操縦など、これまでの戦車映画でもなかなか見られなかった乗組員たちの動きを見ることができる。

さてマニアックな部分もさりながら、この『フューリー』は戦争ドラマとしてもなかなか一級品である。

ブラッド・ピット演じる車長のドン・「ウォーダディ―」・コリア―が主人公ではあるが、もう一人、補充兵のノーマンが一般人的視点として戦争に投入され、しだいに戦争の狂気に侵されていくさまが描かれていく。

不条理に死んでいく仲間や、愛する人。

本来ならば殺す必要のない捕虜の射殺(とうぜん条約違反ではあるが、戦場では兵士たちの裁量で殺されることは、ままあった)。

濁っていくノーマンの人としての罪悪感と、積み重なっていく敵への憎しみが、ノーマンを一人の兵士に鍛えていく。

歴史では、連合軍はナチス・ドイツに勝った。

だが、最前線で戦っていた兵士たちは、勝利の二文字では賄えないほどの負債を心に負ったのである。

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