映画評『フォックスキャッチャー』レスリング界で起きた実話を基にした骨太サスペンス

カチンコ 映画評
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『フォックスキャッチャー』
2014年アメリカ
原題:Foxcatcher
監督:ベネット・ミラー
脚本:E・マックス・フライ
   ダン・フッターマン
音楽:ロブ・シモンセン
出演:スティーヴ・カレル
   チャニング・テイタム
   マーク・ラファロ

『フォックスキャッチャー』イントロダクション

1984年のロサンゼルス・オリンピック、レスリングで金メダルを獲得したマーク・シュルツ(チャニング・テイタム)は、3年たった今でも選手を続けながら、同時に講演会にも呼ばれている。

コーチである兄のデイヴ・シュルツ(マーク・ラファロ)と二人三脚で手に入れたその栄光ではあったが、自分より兄のほうが評価されていることに、マークはどこか不満があった。

兄のデイヴもまたロス五輪でのレスリング金メダリストであり、同時に有能な指導者でもあったからだ。

そこに、デュポン財閥の御曹司であるジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)がマークを引き抜きに来る。

デュポンは自らがコーチとしてレスリングチーム「フォックスキャッチャー」を率いており、そこは最新の設備とトレーニング場が整い、理想的な場所であった。

兄の陰から脱することを望んだマークは、デュポンの誘いを受けチーム・フォックスキャッチャーに入ることにする。

選手の地位向上はすなわち国民のため、国のためでもあると豪語するデュポンは、次のソウル・オリンピックで金メダルをマークに期待し、マークも当然そのつもりだった。

だが、デュポンは実は統合失調症を患っており、ときおり言動がおかしかった。

当惑しながらも精鋭チームを率いるマークだったが、デュポンは自分が指導者の立場であることをことさら強調し、次第にマークも調子を崩し始める。

デュポンはデイヴには指導者として、コーチとしてはとても及ばなかった。

デュポンはやがてデイヴをコーチとしてフォックスキャッチャーに迎え入れるよう画策し、成功する。

デイヴが来たことで居場所がなくなったと思ったマークは、さらに調子を崩す。

また、デイヴも、ことさら支配力を誇示しようとするデュポンに違和感を覚えていた・・・。

レスリング界で起きた実話を基にした骨太サスペンス『フォックスキャッチャー』(ネタバレ有)

伝記ものを得意とするベネット・ミラー監督による、1996年に実際に起きたレスリング界でのある事件を題材にした骨太サスペンスで、アカデミー賞5部門ノミネートに加え、カンヌ映画祭監督賞を受賞している。

ある事件とは、ジョン・デュポンによるデイヴ・シュルツ殺害事件のことであるが、この映画はデイヴの弟マーク・シュルツを軸に、ジョン・デュポンがなぜそこに至ったをきわめて丁寧に描き出している。

また、主演陣であるスティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロの三人の見事な演技がなければ、終始不穏な空気を醸し出すこのフィルムは成立しなかったかもしれない。

それほど全員が見事な演技をしている。

とくに絶妙なサイコパス加減を見せてくれたスティーヴ・カレルの演技は特筆に値する。

脚本運びの妙もあるとは思うが、寛容な資産家と執拗に指導者の地位を欲するふたつのジョン・デュポンの顔を、ゆらゆらと演じ分け、そしてラストに収斂していくさまは、それだけでサスペンス。

またそんなデュポンに引きずられて精神を削られていくマーク役のチャニング・テイタムの演技も並んで良い。

全体のトーンは静かだが、それに反比例する恐ろしさが潜む映画だ。

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