映画評『フォードvsフェラーリ』

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観てまいりました『フォードvsフェラーリ』!

2019年アメリカ
監督:ジェームズ・マンゴールド
主演:マット・デイモン、クリスチャン・ベール

1963年、新市場開拓のためアメリカのフォード社はイタリアのスポーツカーメーカー・フェラーリを買収しようとしますが、これを蹴られます。怒ったフォードの社長は打倒フェラーリを宣言、元レーサーでありカーデザイナーのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)にフェラーリを超える新しい車の開発を依頼します。シェルビーは優秀なドライバーとして、破天荒なイギリス人レーサー、ケン・マイルス(クリスチャン・ベール)をチームに引き入れようとしますが・・・

と、いった感じで始まります。タイトルこそ『フォードvsフェラーリ』ですが…、物語の大筋は、フォードの官僚vs現場のシェルビー&マイルス。

いつの時代も、どこのメーカーでも、新車両の開発には困難が伴うものですが、むしろ主人公二人の前に立ちはだかるのはデトロイトの背広組。あの手この手で協調性のないマイルスをチームから外そうと画策します。熱いのはフォードとフェラーリの戦いではありません。いやらしい根回しやコネと、レースに勝つために命を懸ける二人の男の情熱のぶつかり合いです(笑)

そういえば劇中でマット・デイモンとクリスチャン・ベールが取っ組み合いのおとなげないケンカをするシーンもあります。男の友情が芽生える迷シーンです(笑)

実話を基にした作品であるとは言え、モータースポーツファンの方には「けっこう盛ったな」というのは分かるとおもうのですが、2時間という尺で3年をぎゅっと描いているせいもあり、知らない人が見ると1シーズンの出来事かと思うかもしれません。

車両開発はたった一年でできるものではなく、数年かかるのは当たり前の世界ですので、そのあたりを見せてくれたら良かったと思いましたね。

またクライマックスの1966年のル・マンでフォードがフェラーリに勝った…というのも、フェラーリの車両がリタイアしていった結果なので、そこもちょっと突っ込みどころかも…

とは言え圧巻だったラスト40分あたりからの1966年ル・マン24時間レース。
Wikiにもページがあるくらいなので劇的なレースだったのでしょう。そりゃそうだ王者フェラーリをフォードが初めて下したレースだったのですから。

今はCG技術もあるので、当時の車両をすべて再現して撮影したわけではないでしょうが、スタートのずらっと並んだ参加各車とそれを見守る観客席は壮観です。

レースが始まるとエンジンの爆音を全身で浴びます。これは映画館ならでは。映画館で見てよかった。

レース中の車両も、かなり再現度高かったようです。私はあまり詳しくないので仔細は分かりませんが。少なくともマイルスの乗るフォードGT40Mk2や敵方フェラーリの車両は実写のコピーを用意したのではないでしょうか。

爆走するフォード、振り切れんばかりの速度計やタコメーター、バックミラーを見やるクリスチャン・ベールの鋭い目つき、これらのカットが次々に切り替わり、否が応でもレースに参加しているような、まるでフォードGT40の助手席にでも座っているかのような臨場感を感じさせます。

そしてそんなレースの中でもフォード内での権力のいやらしさが…(笑)

役者に関しても、相当みんな歴史上の本人に似せたのではないでしょうか。

フォード社長やエンツォ・フェラーリをみて「あ、似てる!」と思ったのですが、ケン・マイルスを演じるクリスチャン・ベール! かなり寄せてる! 『バットマン・ビギンズ』であんなマッチョなブルース・ウェインを演じていたベールが、今度はカリッカリに痩せぎすなマイルスに体型を寄せ、当時のマイルスの写真と見比べても本物そっくり。

ただマット・デイモンだけはキャロル・シェルビーに似てませんね…そこは演技力でカバーということなんでしょう(笑)。

一部モータースポーツファンの皆さんにはさっそく話題を提供している本作ですが、現在のモータースポーツが下火になってしまった日本では、大きなヒットは難しい映画かもしれません。私が見に行ったハコも、初日金曜日とは言え、けっこうガラガラで寂しかった。(これが1980年代後半~90年代前半のバブル期なら…!)

一方で、理不尽と戦い、大きな壁に挑戦する男たちのこのドラマ。創作者、表現者、開発者などの人たちには、どこか刺さるものがあるのではないでしょうか。

公式ホームページ:http://www.foxmovies-jp.com/fordvsferrari/

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