『父親たちの星条旗』
2006年アメリカ
原題: Flags of Our Fathers
監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド
スティーブン・スピルバーグ
ロバート・ロレンツ
原作:ジェームズ・ブラッドリー、ロン・パワーズ『硫黄島の星条旗』
脚本:ウィリアム・ブロイレス・Jr
ポール・ハギス
音楽:クリント・イーストウッド
出演:ライアン・フィリップ
ジェシー・ブラッドフォード
アダム・ビーチ
『父親たちの星条旗』イントロダクション
ウィスコン州で葬儀屋を営むジョン・“ドク”・ブラッドリーは1945年、硫黄島で衛生兵として戦った経験を持っていた。
年老いたドクは突然倒れ、「あいつはどこだ」とうわごとを口にする。
ドクの息子ジェームズ・ブラッドリー(トム・マッカーシー)は、父の過去を知るために父の戦友たちを訪ねはじめる・・・。
太平洋戦争末期。
ハワイのキャンプタラワでの訓練の後、第28海兵連隊と第5海兵師団は硫黄島へと向かった。
硫黄島への3日間の艦砲射撃ののち、1945年2月19日、米軍は硫黄島への上陸作戦を開始する。
海兵隊が上陸、全身を始めて間もなくすると、待ち伏せていた日本軍の猛烈な反撃が始まった。
米軍にも多大な犠牲者が出る中、ドク(ライアン・フィリップ)は衛生兵として仲間の救助に当たるが、上陸地点は米兵の遺体で次第に埋め尽くされていった。
2月23日。
アメリカ海軍の擂鉢山への艦砲射撃の援護を受け、海兵隊は前進を開始、2日かかって擂鉢山の征服に成功する。
ドクもこの戦いで幾人もの海兵隊員の命を救い、海軍十字賞をもらうほどの活躍を見せる。
ハンク・ハンセン(ポール・ウォーカー)軍曹の小隊が擂鉢山の頂上に到着、米国旗を掲げた。
海岸や艦船の味方からは歓声が上がる。
これを目撃した海軍長官のジェームズ・フォレスタル(マイケル・カンプシー)が、その旗を所望する。
チャンドラー・ジョンソン大佐(ロバート・パトリック)は、旗は第2大隊のものだと大いに不満をぶちまけるが、国旗の交換をデイヴ・セベランス大尉(ニール・マクドノー)に指示する。
セベランス大尉は伝令のレイニー・ギャグノン(ジェシー・ブラッドフォード)と第2小隊に国旗の交換に向かわせる。
この2番目の旗を掲げるときに、従軍カメラマンであったジョー・ローゼンタールにより、ジョン・“ドク”ブラッドリー、アイラ・ヘイズ(アダム・ビーチ)、レイニー・ギャグノン、ハーロン・ブロック(ベンジャミン・ウォーカー)、フランクリン・スースリー(ジョセフ・クロス)の6名が2番目の国旗を掲げる様子を撮影した。
この“2番目”の国旗掲揚の写真がアメリカ本土の報道各誌の一面を飾ることになる。
国民の士気は否応にも盛り上がり、軍の高官たちはこの写真に写っている6人を戦時国債のキャンペーンに利用することを考える。
だが、最初に国旗を掲げたハンク・ハンセン大尉、そして2番目の旗を掲げた6人のうちのハーロン・ブロック、フランクリン・スースリーは、戦闘で死亡してしまっていた。
上官から写真に写っている6名の名を聞かれたレイニー・ギャグノンは、自分とマイク、ドク、フランクリンを報告するが、残り二人のうちハーロンをハンクと誤認して報告。
アイラは自分の名前が出ることを嫌がり、報告したら殺すと脅迫までしたが、結局レイニーはアイラを上司に報告する・・・。
硫黄島二部作のアメリカサイド『父親たちの星条旗』
太平洋戦争史上最も悲劇的な戦いの一つであった硫黄島の戦いを日米双方の視点から描く「硫黄島プロジェクト」、その米国視点から描いたものが本作だ。(日本視点から描いた作品は『硫黄島からの手紙』)
『父親たちの星条旗』では、凄惨を極める硫黄島上陸作戦とその戦闘の様子を描き、また米軍上陸後の擂鉢山頂上に星条旗が打ち立てられるジョー・ローゼンタール撮影の有名な写真(「硫黄島の星条旗」)の被写体となった兵士たちのその後が描かれる。
ジョン・“ドク”ブラッドリー、アイラ・ヘイズ、レイニー・ギャグノンの3人が、英雄として戦時国債キャンペーンの広告塔として祭り上げられ、事実とのギャップに苦しむ様子は、切なさだけでは語りつくせない戦争のやるせなさ、人間の残酷さの一面を感じさせる。
英雄とは何なのか。
翻弄されたのは兵士たちだけなのか。
一枚の写真が物語となって独り歩きするさまは“いびつ”だ。
それをイーストウッド監督は淡々と、しかしテクニカルにフィルムにした。
何のために星条旗は掲げられたのだろう?
答えは複雑だ。
戦争で戦った兵士の子供たちは、父親たちが掲げた星条旗に、つくられた英雄に、いったいどんな意味を見出すのか。
この映画を観たあとで・・・。
2万人の日本軍が守る硫黄島へ、3万人のアメリカ軍が押し寄せるの戦闘シーンの大がかりなロケは、アイスランドのレイキャネスで撮影された。
火山島である硫黄島独特の黒い砂浜と、運び込まれる大量の銃火器が使用可能であること、大がかりな土木工事が可能であるなどの条件からこの場所が選ばれたという。
戦争映画のマイルストーン『プライベート・ライアン』(1998年)にも負けずとも劣らぬ戦闘シーンのスケール感は特筆に値する。
第49回ブルーリボン賞と第30回日本アカデミー賞で最優秀外国作品賞を受賞している。
なお、この作品のキーとなる「硫黄島の星条旗」の写真を撮影したジョー・ローゼンタールは、この写真でピューリッツァー賞を受賞している。
今作が公開される2か月前に老衰で死去。94歳だった。
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