映画評『ファイヤーフォックス』「ロシア語で考えろ!」イーストウッドの航空サスペンス・アクション

映写機 映画評
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『ファイヤーフォックス』
1982年アメリカ
原題:Firefox
監督:クリント・イーストウッド
原作:クレイグ・トーマス
脚本:アレックス・ラスカー
   ウェンデル・ウェルマン
音楽:モーリス・ジャール
出演:クリント・イーストウッド
   

『ファイヤーフォックス』イントロダクション

アメリカ合衆国、アラスカのある地。

ベトナム戦争で心に傷を負ったミッチェル・ガント(クリント・イーストウッド)は、ランニングで汗を流していた。

そこに轟音を立てて現れる軍用ヘリ。

何事かわからぬガントは、家に駆け戻り、ライフルを抱いて部屋の片隅に隠れる。

彼の脳裏には、あのベトナムでの悲惨な記憶が去来していた。

軍用ヘリはアメリカ情報局からの迎えだった。

ソビエト連邦が、それまでの戦闘機をはるかに凌駕する性能の新型戦闘機(MiG-31 ファイヤーフォックス)の開発に成功したとの情報をNATOがキャッチ、その技術を機体もろとも盗み出す作戦を立案し、母親がロシア人でロシア語をネイティブで話し、考えることができる元米空軍パイロットのガントに、白羽の矢が立てられたのである。

NATOが掴んだファイヤーフォックスのデータは、最大速度マッハ6、試験飛行の情報を事前につかんでいたにもかかわらずその航跡を全くキャッチできなかったステルス性能、そしてパイロットが思考するだけでミサイルや機関砲などの火器管制が行える思考誘導装置を搭載していた。

この思考誘導装置がロシア語にしか感応しないものであったため、人選はガントしかいない、ということになる。

最初は拒否していたガントだったが、最新鋭の戦闘機に乗れる、という話を繰り返し聞くうちに、計画への参加を決める。

まずガントは、ヘロインを密輸入しているアメリカ人ビジネスマンに成りすましてモスクワにはいる。

治安当局の監視、尾行を受けつつも、地元の協力者ウペンスコイ(ウォーレン・クラーク)との接触に成功する。

ウペンスコイは出会うや否や、ガントが成りすましていた本物のヘロイン密売人を殺害、川に死体を投げ込みKGBの捜査を攪乱する。

彼らは最寄りの駅で地下鉄に乗るが、検問が早速始まっていた。

ガントはいったん身を隠していたトイレで、職務質問をしてきたKGB職員を早まって殺害、なんとか二人は駅を脱出する。

ガントは今度はウペンスコイの相棒に成りすまして、ファイヤーフォックスの開発者バラノヴィッチ博士(ナイジェル・ホーソーン)がいる基地に向かうが、すでにウペンスコイの本物の相棒は逮捕されてしまっていた・・・。


「ロシア語で考えろ!」イーストウッドの航空サスペンス・アクション『ファイヤーフォックス』

ソ連の最新鋭戦闘機を奪取すべく、スパイとして潜入することになったアメリカ空軍パイロットの活躍を描く航空サスペンス・アクションがこの『ファイヤーフォックス』だ。

前半の息詰まるスパイ活動から敵基地への潜入、そして後半はうって変わって爽快な空戦アクションと一度で二度おいしい映画でもある。

劇中に出てくるファイヤーフォックスのデザインは今でも一部の層に人気が高く、ときおりガレージキットで販売されていることがある。

全体がマットブラックで塗装されており、デルタ翼かつ無尾翼に長い機首、双発のエンジンという独特の機影だが、映画の公開と同時代に現実世界で明らかになる、アメリカが開発したF-117ナイトホーク・ステルス戦闘機が似た印象を持っており、デザインにリアリティがもたらされた。

ファイヤーフォックスの性能のキモの一つでもある、思考することで火器管制を操作するというシステム(しかもロシア語限定!)は、いまだ現実世界でも実用化されていはいない。

ファイヤーフォックスが大空を飛翔し、空戦を繰り広げるシーンは主に『スターウォーズ』でアカデミー視覚効果賞に輝いたジョン・ダイクストラが率いるアポジー社が手掛け、リアルかつ迫力のあるものになっており、見どころの一つだ。

またこういったミニチュアを用いた撮影はもちろんだが、実物大のファイヤーフォックスとコックピットのセットも用意されている。

空戦的に熱いのは、ガントが盗んだファイヤーフォックス1号機を追うのが、同性能の2号機という展開だ。

同じ性能の2機が雌雄を決するには、パイロットの腕の差のみ!

息詰まる決戦の行方は、ぜひ実際にその目でご確認いただきたい。

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