映画評『エリジウム』ニール・ブロムカンプ監督により描かれる未来の格差社会

カチンコ 映画評
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『エリジウム』
2013年アメリカ
原題:Elysium
監督・脚本:ニール・ブロムカンプ
音楽:ライアン・エイモン
出演:マット・デイモン
   ジョディ・フォスター
   シャールト・コプリー

『エリジウム』イントロダクション

2154年、地球は人口爆発や大気汚染に侵され、生活環境が劣悪化していた。

その一方、衛星軌道上に建設されたスペースコロニー・エリジウムには超富裕層が、地球に住む人々とはまったく異なる高水準の生活を謳歌していた。

アーマダイン社が設計・施工したエリジウムでは、高度な科学技術により市民はあらゆる病から解放され、水と緑にあふれた理想郷のような暮らしを享受できた。

それは、その日の食べ物にも事欠き、病人は十分な医療を受けることができない地球人にはあこがれの別天地だった。

地球人のなかには密航を企てる者もいるが、エリジウムの管理体制は、ドロイドや犯罪者崩れの傭兵をつかい、侵入者の排除に努めている。

エリジウムの防衛長官デラコート(ジョディ・フォスター)は、その強硬さゆえに政敵も多く、その地位保持に危険を感じるようになってきた。

そこでアーマダイン社のCEOで、デラコート同様地球人に強い差別意識を抱いているカーライル(ウィリアム・フィクナー)を巻き込んでクーデターを画策していた。

そんな中、地球のスラム街。

アーマダイン社のドロイド工場で働くマックス(マット・デイモン)は、工場での作業中、事故にあい致死量の放射線を浴び、余命5日の診断を受け、工場を解雇される。

エリジウムなら自分の体を治せる、とマックスはエリジウムへの密航を企て、そのため闇商人のスパイダー(ヴァグネル・モーラ)と取引をする。

その内容とは、エリジウム市民を襲い、エリジウム市民権へのアクセスを可能とする脳内データを奪うことだった。

身動きできないほど身体が弱っていたマックスは、同時に身体能力を飛躍的に向上させる強化外骨格エクソスーツを装着する手術を受ける。

そしてマックスは標的として、カーラーイルを選ぶのだったが・・・。

未来世界の格差社会を描く『エリジウム』

監督・脚本は、人種差別問題をSFエンターテイメントで描き、アカデミー賞4部門にノミネートされた『第9地区』(2009年)のニール・ブロムカンプ。

本作でも格差社会という問題を、近未来SFのなかで描いた。

『エリジウム』作品中では地球に住む人たちは劣悪な環境下で管理され日々を暮している。

いっぽうのエリジウム住民はそれとはまったく正反対のユートピアのような環境で生きることができる。

主人公のマックスは、ディストピア的地球下で生きることを強いられた被害者のひとりだ。

現在の「豊かな国」アメリカを目指す不法移民の群れとそれを強制排除しようとする大統領の施作は、『エリジウム』に置ける移民と防衛長官デラコートのそれとダブって見える。

アメリカに限らない。

欧州でも移民と格差問題に苦しんでいる。

問題提起と一つの解決策の提示はSF作品の意義の一つだ。

ブロムカンプ監督はこの作品のあと『チャッピー』(2015年)で今度は人工知能の可能性と問題に取り組んでいる。

SF映画作家としてブロムカンプ監督の今後に注目していきたい。

豪華ビジュアル・デザイン設定にも注目の『エリジウム』

地球軌道上に浮かぶ巨大なスペースコロニーのデザインには、著名な工業デザイナー、イラストレーターのシド・ミードが協力。

SF映画ではシド・ミードの貢献は大きく、『ブレードランナー』(1982年)をはじめ、『スタートレック』『トロン』(1979年)『2010年』(1984年)『エイリアン2』(1986年)『ショート・サーキット』(1986年)に参加、フォロワーも多い。

シド・ミードは日本のアニメにも貢献しており、『∀ガンダム』(1999年)では主人公ロボ(モビルスーツ)ほか登場するモビルスーツを数体デザイン、評価も高い。

他にも『エリジウム』ではヴェルサーチ、ジョルジオ・アルマーニなどのファッション・ブランドや、ブガッティなどの自動車メーカーも、メカニックやコスチュームのデザインとして参加。

豪華ビジュアル・デザインは眼福ものである。

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