映画評『深夜の告白』名匠ビリー・ワイルダー監督が保険金殺人を描いたジェームズ・M・ケインの小説を映画化したフィルム・ノワールの傑作

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『深夜の告白』
1944年アメリカ
原題:Double Indemnity
監督:ビリー・ワイルダー
脚本:レイモンド・チャンドラー
   ビリー・ワイルダー
原作:ジェームズ・M・ケイン『賠償保険殺人事件』
音楽:ミクロス・ローザ
出演:フレッド・マクマレイ
   バーバラ・スタインウィック
   エドワード・G・ロビンソン
   トム・パワーズ
   ジーン・ヘザー
   バイロン・バー
   ポーター・ホール
   

『深夜の告白』イントロダクション

深夜、少なくなったとはいえまだ車の往来する街角を、運転のあらい自動車が一台、走り抜ける。

その自動車は大きな保険会社のビルの前にとまると、フロックコートの男が降りてきた。

入り口のシャッターを神経質に何度もたたき、管理人を呼び出すと、管理人は「ネフさんじゃないですか」と、この遅い時間帯に不審がりながらも、男・・・ウォルター・ネフ(フレッド・マクマレイ)をビルの中に入れた。

ひろいオフィスはすでに消灯されて静まり返っている。

ネフは、よろめきながら誰もいないオフィスを抜け、自分の部屋にたどり着き、喘ぎながら椅子に座った。

そしてディクタフォン(事務用録音機)のスイッチを押し、録音が始まると、ネフは自らの罪を告白し始めた。

それは5か月前、1938年2月のことだった。

ロサンゼルスの保険会社でバリバリの保険販売員だったウォルター・ネフは、顧客である実業家のディートリクスンの自宅を訪れる。

ディートリクスンが加入していた自動車の保険が期限切れになっていたので、更新の勧誘に来たのだ。

ディートリクスンは不在だったが、美貌を誇る妻のフィリスが代わりに現れる。

ネフは表には出さなかったが、フィリスの美しさに心を奪われてしまう。

また、夫に日ごろから不満を抱いていたフィリスも、ネフを誘惑し、ついに二人は不倫関係に陥ってしまった。

夫を殺してでも別れたいフィリスと、彼女を手に入れたいネフ。

ネフの提案で、ディートリクスンを事故に見せかけ殺害し、巨額の保険金をだまし取る計画が持ち上がった。

これまで数々の保険金詐欺を見てきたネフは、逆に自信があった。

ネフとフィリスは、ディートリクスン殺害のために周到な偽装工作をはじめるのだった・・・。

名匠ビリー・ワイルダー監督が保険金殺人を描いたジェームズ・M・ケインの小説を映画化したフィルム・ノワールの傑作『深夜の告白』

いまもテレビドラマや映画などで綿々と続く保険金殺人を題材にあつかったサスペンスの先駆的作品で、バーバラ・スタインウィックの妖艶な演技が絶賛された。

名匠ビリー・ワイルダー監督が脚本にレイモンド・チャンドラーを迎え、破滅に直面する主人公を自身の回想によって物語を描くという、フィルム・ノワールの原初にして傑作。

主人公を破滅に導くファム・ファタル(運命の女)フィリス役をつとめたバーバラ・スタインウィックは、保険セールスマンをそそのかし夫殺しを手伝わせる人妻という、それまでの彼女が演じてきた役柄のイメージとは正反対の役を演じ、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされている。

他にもアカデミー賞には作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、録音賞、作曲賞とノミネートされたが、惜しくも受賞は逃している。

前述の保険金殺人事件を題材にしていることや、全体に重苦しく暗いフィルム演出、前に出すぎず、しかし不安をあおる伴奏音楽、殺人の偽装工作のサスペンス描写は極めて秀逸で、のちのさまざまなサスペンス・ドラマにいまだに大きな影響を残した、教科書的作品である。

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