『ダーティハリー』
1971年アメリカ
原題:Dirty Harry
監督:ドン・シーゲル
脚本:ハリー・ジュリアン・フィンク
R・M・フィンク
ディーン・リーズナー
音楽:ラロ・シフリン
主演:クリント・イーストウッド
『ダーティ・ハリー』イントロダクション
サンフランシスコのとある高層ホテル、その屋上プールで遊泳していた女性が、何者かによって射殺された。
捜査にあたったのは、通称「ダーティハリー」と呼ばれるサンフランシスコ市警察本部捜査課のハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)。
ハリーはホテルを唯一見下ろすことができる高層ビルの屋上に目をつけると、果たしてそこにはライフル弾の薬莢と、脅迫状が見つかった。
その脅迫状によると、犯人はみずからを「スコルピオ」と名乗り、市警察に10万ドルを要求、これに応じなければ、つぎはカトリックの司祭か黒人(ニグロ)を殺す、と書いてあった。
市警察は犯人との取引には応じず、市内の高層ビルに多数の警官を配置、ヘリコプターでも警戒にあたった。
警戒中のハリーがハンバーガー屋で食事をとろうとしていた時に、近所の銀行で銀行強盗が発生。
ハリーは自慢の44マグナムで強盗をとらえるが、あたりはめちゃくちゃになる。
そんなハリーに上司の警部補は新人の相棒チコ(レニ・サントーニ)を付ける。
さて高層ビルを警戒していたヘリコプターが、怪しい人物を発見する。
だがヘリはその男を逃がしてしまう。
夜の歓楽街をハリーとチコが巡回していると、カリフォルニア・ホールという建物の屋上から飛び降り自殺しようとする男をハリー一流のやり方で取り押さえる。
チコはハリーが「汚れ仕事(ダーティ)」ばかり担当するから「ダーティハリー」と呼ばれていると知る。
スコルピオは今度は黒人の少年を射殺する。
薬莢が見つかった建物から、ハリーは聖ピーター・ポール教会がよく見えることを指摘、警察は教会の警備にあたる。
夜の教会を見張るハリーとチコは、スコルピオを発見するも、反撃にあい逃げられてしまう。
スコルピオは今度は14歳の少女を誘拐、あらためて10万ドルを要求してきた。
今回は市も取引に応じる。
金の引き渡し役にハリーは命じられチコが車であとをつけることになったが・・・。
時代をつくったアクション刑事ドラマの決定版『ダーティーハリー』
主演クリント・イーストウッド、監督ドン・シーゲルのコンビによるアクション刑事ドラマの決定版。
サンフランシスコ市警察のハリー・キャラハン刑事の活躍を描く記念すべき第一作目。
殺人化の刑事ハリーは44マグナムを片手に強引な捜査を行うため、仲間から「ダーティハリー」と呼ばれているアウトローだ。
そんな型破りの刑事ハリーを主人公に、それまでパッとしなかったドン・シーゲル監督が、これまたマカロニ・ウエスタン役者くらいの認知度しかなかったクリント・イーストウッドを主役に据え、歴史に残る大ヒットアクション映画となった。
夜の闇を有効に利用したり、移動するバスにハリーが飛び乗ったり等、緊張感あふれる演出が冴える。
ドン・シーゲルとイーストウッドの初コンビは『マンハッタン無宿』(1969年)であるが、西部劇風のいでたちの刑事がマンハッタンに一人、犯人を追いつめていくスタイルですでに『ダーティハリー』の萌芽がうかがえる。
そのあとドン・シーゲルとイーストウッドは『真昼の死闘』(1971年)という西部劇、『白い肌の異常な夜』(1971年)という異色サスペンス映画でも組んで、師弟関係とでもいうべき関係を築いていく。
劇中、犯人「スコルピオ」が起こしていく劇場型連続殺人犯罪は、当時実際にあったゾディアック事件をモデルにしていると言われる。
映画公開当時でもまだ未解決だった凶悪犯罪に立ち向かうのは、ハリーのような怒りに燃える、それでいて超法規的に執拗に犯人を追いつめるキャラクターが新しかった。
本作が一つ頭ぬけた存在になったのは、ラロ・シフリンの音楽も外せないだろう。
緊迫感をあおる、当時新しかったファンクの要素を取り入れた劇版はカッコいい。
なにせこの映画の前後で、刑事ものアクションのスタイルががらりと変わった。
70年代の幕開けを感じさせる傑作である。
こちらの作品もどうぞ!
≫映画評『マンハッタン無宿』イーストウッドとドン・シーゲルの初タッグ
コメント