映画評『チャッピー』意識を持ったAI搭載ロボット、だがその余命はわずか5日間だった・・・。

カチンコ 映画評
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『チャッピー』
2015年アメリカ
原題:CHAPPiE
監督:ニール・ブロムカンプ
脚本:ニール・ブロムカンプ
   テリー・タッチェル
原作:ニール・ブロムカンプ『Tetra Vaal』
音楽:ハンス・ジマー
出演:シャールト・コプリー
   デーヴ・パテール
   ワトキン・チューダー・ジョーンズ
   ヨ=ランディ・ヴィッサー
   ホセ・パブロ・カンティージョ
   ヒュー・ジャックマン
   シガニー・ウィーバー
   ブランドン・オーレット
   ジョニー・K・セレマ
   アンダーソン・クーパー

『チャッピー』イントロダクション

N・スミス(ジャーナリスト)
「これまでの進化の歴史からして、ありうることです。あのような、チャッピーの予想外の進歩は・・・」

W・ロバーツ(MIT 認知科学者)
「この先どうなるか・・・今の段階ではわかりません。こんなに早く現実になるとは想像もしていませんでした」

近未来の南アフリカ、ヨハネスブルグ。

その都市での高い犯罪発生率に対応するため、政府は高性能人工知能を取り入れた最先端のロボットを警察に導入した。

開発したのは大手兵器メーカーTetravaal社。

開発者は若き天才エンジニア、ディオン・ウィルソン(デーヴ・パテール)。

ディオンは会社で警官ロボットのメンテナンスにあたるかたわら、自宅では高度な人工知能の開発に明け暮れていた。

それは感情を持ったり、自分の意思を表明することのできる、人間の知性を模倣した新たな人工知能ソフトウェアだった。

そしてある朝、ディオンはその画期的なプログラムの開発に成功する。

高揚したディオンは上司のミシェル・ブラッドリー(シガニー・ウィーバー)に、新しい人工知能をロボットに搭載する実験を提案するが、ミシェルはこれ以上の警察ロボットの性能の向上は必要ないと却下する。

だが思いつめ、衝動を抑えきれないディオンは、工場にメンテナンスに戻ってきていたロボット「22号」に目をつける。

それはある事件でロケット砲弾の攻撃を受け、バッテリーを損傷し、廃棄される予定のものだった。

だが22号をバンに乗せて帰宅途中、ディオンはギャンググループのニンジャ(ワトキン・チューダー・ジョーンズ)、ヨーランディ(ヨ=ランディ・ヴィッサー)、アメリカ(ホセ・パブロ・カンティージョ)に誘拐されてしまう。

ニンジャたちは自分たちの強盗を成功させるために「警察ロボットを停止させるためのリモコン」を欲しがっていたのだったが、開発者のディオンはそんなものは無いと断言。

だがひょんな成り行きで22号にディオンの開発した新しい人工知能をインストールし、起動に成功する。

生まれたばかりの“それ”は「チャッピー」と名付けられ、人間よろしくさまざまなことを学習していく・・・。

意識を持ったAI搭載ロボット、だがその余命はわずか5日間だった・・・。『チャッピー』

『第9地区』(2009年)、『エリジウム』(2013年)の監督ニール・ブロムカンプが、そのシニカルな視点で近未来のAIが巻き起こす悲喜劇を描いた良質SF映画がこの『チャッピー』だ。

監督お得意の南アフリカが舞台で、『第9地区』同様、雑然とした街並みと活躍する近未来ロボのバランス感覚は、見事である。

『チャッピー』に出てくる警察ロボはウサギの耳のように頭部に2本のアンテナなんだかスタビライザーなんだかが特徴的で、これは80年代の日本のオタクにはピンとくるデザインだ。

『攻殻機動隊』で有名な作家士郎正宗の作品『アップルシード』にブリアレオスという全身サイボーグが出てくるのだが、こいつの頭のデザインにチャッピーのそれはよく似ている。

じっさい、ニール・ブロムカンプ監督はその影響を隠さず言及している。

いきなり脇道にそれた。

映画『チャッピー』の魅力はそういったことではなくで、よくできた「人の思考に近いことをができるAI」という装置と、人間との関係をシミュレートしてみせたことにある。

『チャッピー』の独特なところは、よくある「AIの反乱」とかではなく、単体で、社会の異質として投げ込まれたチャッピーが引き起こすドラマだ。

これはAIの問題ではなく、同じ人間同士でもマジョリティのなかにマイノリティが紛れ込んだ時に起きるそれと似ている。

また、チャッピーの活動限界をロボットのバッテリーの故障により5日間弱に限定したことも、映画としてハラハラ感を増すことに成功しており、チャッピーがロボットであることに意味がある。

『第9地区』ほどキツい問題提起をする作品ではなく、エンタメにしっかり着地している『チャッピー』だが、それだけにストレス無く見ることができる。

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