『遠すぎた橋』
1977年イギリス・アメリカ
原題:A Bridge Too Far
監督:リチャード・アッテンボロー
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
原作:コーネリアス・ライアン『遥かなる橋』
音楽:ジョン・アディソン
出演:ロバート・レッドフォード
ジーン・ハックマン
マイケル・ケイン
ショーン・コネリー
アンソニー・ホプキンス
『遠すぎた橋』イントロダクション
第二次世界大戦5年目、依然ヒトラーは優位でヨーロッパの多くの地域はドイツ軍の支配下にあった。
これがDデイ・・・ノルマンディー上陸作戦で状況は一変する。
1944年6月6日、アイゼンハワー大将率いる連合軍はノルマンディーに上陸した。
同年7月、連合軍は攻勢に転じ、8月、パリが解放された。
ドイツ軍の退却が始まった。
だが連合軍は問題に直面する。
ノルマンディー経由で補給線は伸びきり、物資は著しく不足、進軍が停滞し始めたのだ。
大将は別の問題も抱えていた。
配下のパットンとモントゴメリーが互いに激しく対立していたのだ。
二人は長年のライバルだった。
だが、両方には物資は割けない。
二人とも打倒ドイツ軍に燃えベルリン一番乗りを争っていた。
9月、モントゴメリーは一大作戦を立案し、“マーケット・ガーデン”と命名。
英国の政治的圧力に屈したアイゼンハワーはこの作戦を承認する。
そしてマーケット・ガーデン作戦が発動された。
過去、幾多の戦争の作戦がそうだったように、クリスマスまでに終結し兵は帰国できるはずだった。
しかし・・・。
実話をもとに第2次世界大戦の“マーケット・ガーデン作戦”の全貌を描く超大作『遠すぎた橋』
この映画はコーネリアス・ライアンの著作をもとに、実際に行われた“マーケット・ガーデン作戦”の全容をオールスターキャストの群像劇スタイルで描いた超大作映画である。
この作戦は3個空挺師団(英第1、米82、米101)と1個空挺師団(ポーランド第1)が敵中深く降下し、ベルギーとオランダのあいだにある5つの橋を占領、橋頭堡を築き、そこを機甲師団(英第30)が駆け抜け、一気にライン川を渡りオランダを開放、ドイツの喉元にくさびを打ち込みベルリンに進攻するというもので、この作戦によりクリスマスまでには戦争は終わると楽観視されていた。
だが連合軍は、天候不順や情報の錯綜に苦しめられる。
3つの橋の占領までは何とか成功するものの、第4の橋の攻略のころから、作戦の無謀さが露呈し始め、戦場は悲惨の一途をたどることになるのである。
結果的にこの作戦は失敗に終わるが、映画はそこまでは描いていない。
ただ上層部の決定に翻弄される現場の将校たちや、末端の兵士たちの苦闘、戦場となった場所の民間人たちの悲惨な状況を群像劇として描いている。
ノルマンディー作戦以後の連合軍は一本やりでナチスドイツに勝利したわけではないことを歴史から学んでおきたい。
映画としての見どころは、やはりオールスターキャストとと言っても過言ではない出演陣の豪華さ(ロバート・レッドフォード、ジーン・ハックマン、ローレンス・オリヴィエ、エリオット・グールド、マイケル・ケイン、ダーク・ボガード、ショーン・コネリー、アンソニー・ホプキンス、マクシミリアン・シェルなどなど)。
名優ばかりなので、映画的な配慮なのだろうが、彼らが戦場で死ぬことはないのだが、苦闘を演じている。
また、空挺部隊の圧倒的物量は、CG無しのこの時代によくぞこの画が撮れたなと感心する。
膨大な量のパラシュートが空を覆いつくシーンは圧巻である。
兵士たちを輸送する航空機も画面を埋め尽くさんばかりに登場するが、こちらは一部光学合成されているのがよく見るとわかる。
連合軍側の兵器に関してはわりと忠実に再現されているが、ドイツ軍の、特に戦車についてはイミテーションなのがバレバレ。
これは20世紀のどの戦記映画もそうなのだが、ティーガーはじめドイツ軍の兵器車両はほぼ遺っておらず、張りぼてやアメリカの戦車を塗装でごまかしたりするしかなかったからだ。
まあ、鑑賞にあたっては、そういった些細なところは差し引ける。
言葉に出さずに戦争の可否を訴えかけるこの映画は、数あるハリウッドの戦争映画のなかでも指折りの傑作である。
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